マンガ界の「残酷さ」を描いた実写映画4選 「よそよそしくなる編集者」に恐怖…!
39歳で過労死『バクマン。』

人気マンガ『バクマン。』(原作:大場つぐみ、作画:小畑健)は、2015年に実写映画化されました。高校生ながら、漫画家デビューを目指す真城最高(佐藤健)と高木秋人(神木隆之介)の物語です。最高の叔父、漫画家の川口たろう(宮藤官九郎)のエピソードが、ひときわ印象に残ります。
川口は過去にギャグマンガをヒットさせましたが、読者アンケートの順位が低迷し、連載は打ち切りに。川口は熱心に新作を編集部に持ち込むものの、なかなか採用されません。仕事場で倒れた川口は、39歳の若さで急逝します。
掲載予定のない原稿を描き続けての過労死とは壮絶です。原作者・大場つぐみさんの心情を投影したかのような逸話です。
最高&秋人の担当編集者(山田孝之)が、編集者の心得を口にします。
「僕たち編集者は、決して君たちの敵じゃない。もし、漫画家と編集部が対立したら、僕は必ず漫画家の側につく」
編集者のみなさんは、ぜひ覚えておいてください。
原稿料がもらえない『ゲゲゲの女房』

水木しげる先生の妻・武良布枝さんの自伝エッセイを映画化したのは、吹石一恵さんが主演した『ゲゲゲの女房』(2010年)です。
生活は安定していると聞いて、漫画家の水木(宮藤官九郎)と結婚した布枝でしたが、現実は違いました。水木の描く妖怪マンガは暗くて売れず、出版社は原稿料の支払いを渋ります。
お米を買うお金もないので、農家からクズ野菜を分けてもらい、パンの耳で空腹を満たす生活でした。たまに食べる、黒くなったバナナがごちそうです。「貧乏でも死にはしない」と笑う水木の不思議な生命力に感化され、布枝もたくましくなります。
NHKで放映された連続テレビ小説版と違って、映画では水木が売れっ子になるまでは描かれません。将来のことは分からないけれど、水木が描く『墓場の鬼太郎』のベタ塗りを布枝が懸命に手伝う姿に、夫婦愛が感じられます。
時代の波に取り残される『トキワ荘の青春』
最後に紹介するのは『トキワ荘の青春』(1996年)です。時代は昭和30年代。漫画家の寺田ヒロオ(本木雅弘)が暮らすアパートに、漫画家志望の藤本弘(阿部サダヲ)らが次々と訪れます。寺田はあれこれと世話を焼き、寺田を中心にした「新漫画党」が結成されます。理想のマンガを語り合う、夢のような時間が流れます。
しかし、マンガは月刊誌から週刊誌が主流となり、刺激の強い内容を編集部は求めます。若手が売れる一方、理想にこだわる寺田は徐々に仕事を減らしていくのでした。夢を語り合って飲み交わしたチューダー(焼酎のサイダー割り)が、苦い味に変わります。
時代の波に取り残された寺田は、静かにアパートを去ることになります。タイトルは『トキワ荘の青春』ですが、マンガ業界の青春期の終焉を描いた作品となっています。
多くの漫画家たちの奮闘や挫折の上に、今のマンガ産業は成り立っていると言えるでしょう。漫画家はひとりの生身の人間であることを、忘れずにいたいものです。
(長野辰次)




