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激変するゲーム業界 任天堂、SIE、マイクロソフト…大手3社の「異なる戦略」とは

国内では二強の任天堂とSIE、しかし戦略には大きな違いが

マイクロソフトの「Xbox Series X|S」は、そのパワフルさで多くのファンから支持を得ている
マイクロソフトの「Xbox Series X|S」は、そのパワフルさで多くのファンから支持を得ている

●マイクロソフトと肩を並べるも、不運に見舞われた「PS5」に苦しむSIE
 SIEは、任天堂一強だった時代に初代PlayStationで切り込み、ゲーム業界に大きな影響を与える家庭用機デビューを果たしました。その後も、PlayStationシリーズは長きにわたって活躍し、今日へと至ります。

 そのゲーム事業展開は、ゲーム機のハイパワー路線や、サブスクリプションサービス「PlayStation Plus」(以下、PS+)への注力など、マイクロソフトの戦略といくつか通じる部分もあります。特にゲーム機の性能は、肩を並べて切磋琢磨するライバルのような関係とも言えるでしょう。

 しかし現行機の展開でSIEは不運に見舞われ、PlayStation 5(以下、PS5)の普及に難儀した時代があります。その苦戦は、同社のゲーム事業展開に小さからぬ影響を与えるほどです。

 PS5はハイスペックな家庭用ゲーム機として、発売前から注目を集めていました。性能の高さゆえに価格も高めでしたが、予約の受付開始直後に品切れになるほどの人気ぶりで、その先行きは明るいと誰もが考えます。

 ですがコロナ禍の影響が直撃し、生産数が予定を下回り、高まった需要に対して供給がまったく追いつきません。その結果、国内で誰もが気軽に買えるようになるまで、2年以上もの時間を要しました。

 普及の出足をくじかれた上に、円安の影響により本体やコントローラーの価格を値上げせざるを得ず、機会損失と購買意欲の減退を招いています。いまは供給が追いつき、ようやく普及が広まっているものの、本来予定していた路線とは少なからずかけ離れていることでしょう。

「PS+」のサービスは、SIEのゲーム事業を支える大きな柱のひとつです。いま現在も堅調な活躍を見せていますが、こちらも昨年9月に値上げが行われ、一部ユーザーの間で不満が募りました。

 また「PS+」は、サービス内容が近い「Game Pass」と比べられることも多く、「一部の新作が発売日から遊べる」「初月100円や3ヶ月100円などのキャンペーンがある」といったマイクロソフトのパワフルな施策を見ると、やや物足りなさも感じます。

 近年は、家庭用向けに開発した自社タイトルのPC版をリリースする展開にも力を入れており、先日もPC向けに『Horizon Forbidden West Complete Edition』の配信を開始したばかり。一部のPCユーザーからは、SIEの参入を喜ぶ声が上がっています。

 ですが、こうした形でPC方面にも注力すると、「PCで遊べるなら、PS5は買わなくていいか」と考える人がいてもおかしくありません。こうした施策がPCユーザーの取り込みに繋がるのか、PS5の普及に影響を及ぼすのか、SIEの今後に注目が集まります。

●「ブルーオーシャン戦略」と人気IPの活用で戦う任天堂
 通じる部分も多いマイクロソフトとSIEの動きと比べると、任天堂の在り方はやや路線が異なります。まず、家庭用ゲーム機に対する姿勢が違っており、処理性能のハイパワーはあまり求めていません。

 特にWii以降は他社との違いがより顕著になり、性能面に不満をこぼすユーザーの姿をネット上で見かける機会も増えました。しかし、Wiiや現行機のNintendo Switch(以下、スイッチ)は、全世界で1億台を突破するほど普及しています。

 任天堂はゲーム機に高性能を求めない一方、ゲーム体験の広がりに注目する傾向があります。Wiiの場合は、リモコン型コントローラーを採用し、普段ゲームを遊ばないカジュアル層の取り込みに成功しました。またスイッチの携帯性は、スマホの普及で定着した「場所を選ばず自由にアクセスするライフスタイル」と合致し、好評を博します。

 加えて、高性能を求めないことで、ライバル機と比べて低価格で提供できるため、普及が進みやすいといった利点もあります。特にスイッチの場合は、「一家で一台」ではなく「子供たちに1台ずつ」という広がり方もあり、これは他社のゲーム機にはない強みです。

 こうした任天堂の在り方は、「任天堂はケンカしたら負ける、よそとケンカしたらあかんのや」(書籍『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』より)という当時の山内社長の考えが、その後の世代にも受け継がれたためでしょう。

 ここで言うケンカとは、同じ路線や舞台で戦うということ。同じターゲット層を奪い合うのではなく、ほかが手を付けていない層を狙う「ブルーオーシャン戦略」を、任天堂は重視しています。

 任天堂も、ゲームのサブスクを含むオンラインサービスを行っていますが、遊べるゲームは何世代も前のものばかり。しかし、その分月額料金がかなり押さえられており、ユーザーの負担は軽めです。これも、「Game Pass」や「PS+」とケンカせず、独自の道を選んだ結果かもしれません。

 また、2社との大きな違いは、強力な自社IPの存在も外せません。マイクロソフトやSIEも、世界的に大ヒットした人気シリーズをいくつも抱えていますが、任天堂の場合は人気IPの作品数が多く、また数十年にわたるシリーズも少なくありません。

 アクションからレースまで幅広くジャンルを網羅する『マリオ』、奥深い冒険を満喫できる『ゼルダの伝説』、スローライフゲームの先駆けであり、いまも高い人気を誇る『どうぶつの森』、各IPのキャラクターが一堂に会した『大乱闘スマッシュブラザーズ』など、枚挙に暇がないほどです。

 ゲーム機の処理性能は高くないものの、人気の高い自社IPでシェアを拡大させ、その普及率に惹かれたソフトメーカーが参入する。ラインナップが広がるとユーザーがさらに増え、そのゲーム機がいっそう活気づきます。こうした好循環が、任天堂の武器と言えるでしょう。

 ライバルと競い合わない「ブルーオーシャン戦略」と、ユーザーを魅了する数々の人気IPの所持。この2本柱の強みは、スイッチのヒットを見ても明らかです。この勢いを次世代機にも引き継ぎできれば、任天堂の躍進が続くことでしょう。

* * *

 3社のゲーム事業展開は、似ているところもあれば、独自色が強い面もあり、こうして比べてみるのも一興でしょう。また、近年はいずれも、ゲーム原作の映像化に力を入れているという共通点もあります。

 ゲーム業界の雄がそれぞれ競い合ったり、まったく新しい可能性を広げたりと、これからもさまざまな模索を行うことでしょう。3社が見せるであろう新展開と躍進を、どうぞお見逃しなく。

(臥待)

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