FC版『ドラクエ』のローラ姫はナゼさらわれた? 「めとるため」とはいえないワケ
ファミコン版『ドラクエ』でローラ姫がさらわれた理由、あなたはご存じでしょうか。明言されなかったその背景を、ゲーム内の情報から推測してみました。りゅうおうの、意外な意識の高さも浮き彫りに?
クッパが姫をさらう理由は「恋心」 では「りゅうおう」は?

王国の姫が竜にさらわれ、立ち上がった勇者が姫を救い出して竜を討伐する。原典が辿(たど)れないほど王道すぎるこの展開は、さまざまな形にアレンジされつつ、いまも多くの作品に用いられています。
国産ゲームを紐解いてさかのぼると、特に連想しやすいのはファミコン版『ドラゴンクエスト』でしょう。悪の化身「りゅうおう」によってモンスターがはびこる世界となり、ラダトーム国王の娘「ローラ姫」もさらわれた後、勇者「ロト」の血を引く主人公が城を訪れることで物語の幕が上がります。
しかし「姫をさらう」とひと口に言っても、その理由は作品ごとにさまざまです。果たして『ドラクエ』のローラ姫は、いかなる理由で連れ去られたのでしょうか。王道展開に流され、つい見落としがちな「さらわれた理由」について考えます。
なお初代『ドラクエ』は、後にリメイク版がリリースされたほか、コミカライズにノベライズ、CDドラマなども作られました。各作品で設定が異なる場合もあるため、今回は原点であるファミコン版『ドラクエ』に絞ってお届けします。
●姫をさらう理由の定番「妻にするため」は、当てはまらない!?
さまざまな物語で、姫は悪の化身にさらわれますが、その理由は千差万別です。人質にして国を相手に交渉に臨む場合もあれば、自分の妻にするべく連れ去る場合もあります。
典型的な後者のケースは、ピーチ姫をさらうクッパです。一部の作品で理由が異なる場合はあるものの、クッパの恋心が理由でピーチ姫をさらう場合がほとんどでした。そこには種族の壁も関係なく、ただ恋のために突き進む男の姿があるのみです。
では、りゅうおうがローラ姫をさらったのも、妻として娶(めと)るためかと聞かれれば、少なくともファミコン版『ドラクエ』に限ってみれば、イエスとはいえません。まず、ローラ姫をさらった理由について作中では言及されていませんし、すでに妻を娶っている可能性が少なからずあるためです。
というのも、続編の『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』に「りゅうおうのひまご」が登場します。ひ孫がいるということは、妻ないしそれに準ずる相手がいて、その女性がりゅうおうの子供を産んでいるはずです。少なくとも、りゅうおうが勇者に倒される前に出産もしくは妊娠していないと、その血筋が後の作品につながらなくなります。
りゅうおうの子供を産んだ相手がローラ姫という描写はないため、別の女性がりゅうおうの子供を産んだ可能性が高いでしょう。すでに妻(らしき存在)がいるのはほぼ確定なので、少なくとも娶るためにローラ姫をさらったとは考えにくいところです。
いわゆる「愛人」にしたかった可能性となるとゼロではありませんし、ローラ姫の幽閉場所がりゅうおうの住まいから離れていた点も妙なリアリティを感じますが、それよりも明確な「さらった理由」を作中の展開から予想できます。