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『王立宇宙軍 オネアミスの翼』公開から33年。ガイナックスの原点は「異色作」だった

『AKIRA』『GHOST IN THE SHELL』に先駆けるジャパニメーションに

『王立宇宙軍』主人公のシロツグ(右)と、ヒロインのリイクニ(左)。画像は同作オリジナルサウンドトラック(ミディ)
『王立宇宙軍』主人公のシロツグ(右)と、ヒロインのリイクニ(左)。画像は同作オリジナルサウンドトラック(ミディ)

 その反面、『王立宇宙軍』は、DAICON FILMやガイナックスの作品の大きな特徴であるマニア心をくすぐる過去作のパロディやオマージュ、あるいはアニメファンたちが好む良い意味でケレン味ある展開や演出が極端に抑えられているように映ります。

 初めてプロとして映画を作ることになったガイナックスが、なぜ自分たちの得意技ともいえる手法をあえて使わなかったのでしょうか。制作にあたり提出された企画書には、このように記されています。

「皮相な情報の氾濫により、安心できる価値観や夢が打ち壊されてしまっており、特に若者は欲求不満と不安のただなかにいます」「この世界には、まだまだ価値あることや意味あることが存在する、と宣言するような作品こそ、今、最も望まれるものではないでしょうか」(『王立宇宙軍』企画書より)

 80年代半ば頃は、パソコン通信などのニューメディアが台頭した時代でした。ビデオデッキが一般家庭に普及したことでOVA(オリジナルビデオアニメ)ブームが起こり、アニメーション作品も乱発されていきます。そんななか、『王立宇宙軍』の企画書は、現実世界にある大切な何かをアニメーションで表現すると提言しました。キャラクターも動きも、物語もデフォルメは極力抑えて作られたそのルックは、まだ漫画映画路線を引きずるアニメーションが多かった当時としては、画期的なリアル志向のものでした。

 しかし公開当時、こうしたリアル志向のアニメを楽しむ層は、現在ほど確立していませんでした。実際、彼らのファンだった筆者も劇場公開時は、好きだったDAICON FILM作品のような陽気さやわかりやすい面白さがなりを潜め、異世界ではあるものの限りなく現実に近い世界でシロツグたちが足掻くという物語が地味で爽快感に欠けるものに感じて困惑しました。

「愛の奇跡……信じますか」といった同作品の宣伝文句が、当時流行していたファンタジー色を強調したものだったことも影響したのかもしれません。“等身大の若者の気分が描かれている”“映像がすごい”“盛り上がりに欠ける”“キャラクターが格好よくない”など、評価が賛否両論の真っ二つに分かれ、興行的にはかなり苦戦したそうです。

 しかし、こうしたアニメーションにおけるリアル志向は、翌年に公開された映画『AKIRA』や、その後の『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』で開花し、ジャパニメーションが世界を席巻する大きな要素のひとつとなっていきます。

【画像】『王立宇宙軍』終盤、「発射場」の戦争シーンを駆けた異形の戦闘機 (5枚)

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