『王立宇宙軍 オネアミスの翼』公開から33年。ガイナックスの原点は「異色作」だった
現実を説くために構築された「異世界」
表現のリアル志向を掲げる一方で『王立宇宙軍』が架空の世界を舞台にした理由について、山賀博之監督は公開当時こう語っています。
「僕らは良く言われているような異世界観を追求したのではなく、あくまでも、現実っぽい現実世界を再構築させるべく、現実を追求したんです」(『B-CLUB SPECIAL オネアミスの翼 王立宇宙軍 COMPLETED FILE』より)
「例えばロケットの話で、ガガーリンの話にするとソ連のストーリーだし、アメリカの話だと現にあった話になって、こちらが伝えたい部分が純粋に受け取ってもらえないだろう。それなら、まったく別の世界の話にしちゃおうと」(「キネマ旬報」1987年3月下旬号より)
こうして、『王立宇宙軍』では各国の経済システムから貨幣、言語に至るあらゆる異世界の設定を、1年半近くかけて作り上げたそうです。
これらの発言から推測すると、山賀博之監督は、それまでDAICON FILMがアニメやマンガ、特撮をパロディの元ネタにしていたのに対し、『王立宇宙軍』では“現実”そのものを元ネタにしようとしたのかもしれません。
のちに山賀博之監督は雑誌のインタビューでこう話しています。「結局僕らというのは(中略)何も生み出さない、何も行わない、何も主張しないというふうに言われ続けたわけですよ(中略)だからあえて上の世代にも通じる言語で語ってみようと。俺達はお前らと違って、こうなんだっていうことを」(「クイック・ジャパン」VOL.18 GAINAX風雲録 山賀博之インタビューより)
パロディや二次創作は本来原典に対して批評性を発揮するものですが、軽妙洒脱をよしとした80年代、現実の貴さを描くために現実の鏡絵のような架空の世界を手間ひまかけて作り上げていくという倒錯じみた行為が、山賀博之監督とガイナックスの面々が現実への本心を顕にするために必要だったのかもしれません。いつもシラケた態度で何かに真剣に取り組むことから逃げていたシロツグや宇宙軍の面々が「本気」になるのに人類初の有人ロケットが必要だったように。
『王立宇宙軍』以降、ガイナックスが手がける作品は『トップをねらえ!』などエンターテインメントの要素がより顕著になっていきますが、やはりガイナックスの原点は、ここにあったと筆者は考えています。
(倉田雅弘)




