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劇場版『ガンダムSEED』後半が笑えるくらい振り切ってたワケ ラクスの姿にスタッフから「世界観違う」の声も

2024年9月20日(金)より、通常版から500以上のカットをアップデートし、さらに独自の2種類のエピソードカットを加えた映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』特別版が上映されます。後半40分の怒涛のアクション描写は、福田己津央監督のある演出意図があってのことでした。

後半40分以上にわたる怒涛の展開! 演出の意図とは?

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』特別版上映告知ビジュアル (C)創通・サンライズ
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』特別版上映告知ビジュアル (C)創通・サンライズ

 2024年9月20日(金)より、通常版から500以上のカットをアップデートし、さらに独自の2種類のエピソードカットを加えた映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』特別版が上映されます。

※本稿は映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のネタバレを含みます。予めご了承下さい。

 同作の通常版は2024年1月26日に公開されて、興業収入46億円超えの大ヒットを記録しました。TVシリーズ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』から18年ぶりとなる直接的な続編でしたが、ファンの満足度は非常に高く、リピーターが数多く見られました。

 特に後半、戦艦「ミレニアム」で「キラ・ヤマト」たちが宇宙にあがってから40分以上にわたる「アウラ・マハ・ハイバル」率いるファウンデーション王国アコード軍との戦いは、「月面からの巨大ビーム砲撃を航行中の戦艦が操舵で回避!」「デスティニーSpec IIの分身攻撃!!」「圧倒的なビジュアルインパクトのラクス・クラインのパイロットスーツ!!!」「マイティーストライクフリーダムガンダムが使用する原子を崩壊させながら核分裂を抑止する究極兵器・収束重核子ビーム砲ディスラプター!!!!」など、エンターテインメント精神あふれるアクション描写が矢継ぎ早に展開していきます。

 しかし、こうしたアクション描写は、福田己津央監督のある演出意図があってのことでした。

『SEED FREEDOM』での、大きな戦闘シーンは3つ。冒頭のアフリカ共和国オルドリン自治区での「ブルーコスモス」とオルドリン守備軍、キラたち世界平和監視機構「コンパス」の戦闘。中盤のファウンデーション王国国境近くでの、精神浸食を受けて混乱したキラとアコードたち「ブラックナイトスコード」、そしてユーラシア軍との戦闘。最後が前述の宇宙要塞「アルテミス」を占拠したファウンデーション王国アコード軍と、キラたちミレニアム隊の戦闘です。

 最初のオルドリン自治区での戦いは、モビルスーツのあおりや一般兵士の視点からの構図や、被害に遭う一般市民の描写を多用するなど、戦禍の悲惨さを前面に押し出した演出になっています。以前、筆者がアクション描写について、福田監督に取材したところ、以下のような答えが返ってきました。

「アクション描写でやろうとしていたのは、とにかく冒頭はリアルな戦闘にすることで、モビルスーツの重量感や動きに説得力をもたせて欲しいとスタッフに伝えていました。そこで観客の皆さんに納得してもらえれば、後半は勢いや見栄え重視で、派手な外連味(けれんみ)のあるアクションでいいからと」
(「月刊ガンダムエース2024年5月号」福田己津央監督インタビューより)

 実はそれはTVシリーズでも同様で、シリーズの冒頭はリアル志向で、話数が進むに連れて徐々に見た目が激しいアクションにしていったそうです。本作『SEED FREEDOM』には、TVシリーズの「SEED」のファンだったというスタッフも多く参加しています。彼らの印象に残っている「SEEDらしいアクション」は、主に後半の派手なものだったので、イメージの刷り合わせという意味でも、この前半のオルドリン自治区での戦いの演出は、とても難しかったとか。

 そして、こうしたアクション描写へのこだわりは、福田監督の戦争観と創作上の葛藤に基づくものでもありました。

「結局一番問題なのは、そうやって一元的な価値観を、無理やり人に押し付けることで、その極端な例が戦争なわけです」
「戦争は悲惨です。リアルに描くということは、その残虐性や悲劇性を描いて、最終的には強い者が力にものをいわせて勝つという話で」
(「月刊ガンダムエース2024年5月号」福田己津央監督インタビューより)

 まず戦争は悲惨で理不尽なもの、それは大前提とした上で、戦争を題材としてエンターテインメント作品を創作する立場としては、クライマックスにカタルシスのあるアクションを置かざるを得ません。そこで福田監督は、ならばいっそのことクライマックスの戦闘では、あえてリアル路線ではなくファンタジーめいたオーバーな演出を施すことで、アクションの快感を前面に出していくという方向を選んだのです。

「最後のマイティーストライクフリーダムの活躍とか『もう、これ冗談だろ』と笑えるくらい振り切った描写にして」
(「月刊ガンダムエース2024年5月号」福田己津央監督インタビューより)

 ちなみに「ディスラプター」のシナリオ段階での名称は「超破壊光線」で、小説での記述によれば「次元そのものをも切り裂く」威力だそうです。

 ラクスのパイロットスーツも、デザインラフがあがった際には、世界観が違うのではという意見もあがったそうです。しかし、福田監督はすごく気に入り、プラウドディフェンダーから宇宙に出てマイティーストライクフリーダムと相並ぶ、あの名シーンが生まれたのだとか。

 通常版でも圧巻だった最後のアクションシーンは、今回の特別版でどのようにグレードアップしているのでしょうか。今から楽しみです。

(倉田雅弘)

【画像】え…スタッフの間でも賛否両論? こちらがラクス様の際どすぎるパイロットスーツ姿です(6枚)

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