声優・内海賢二さんを偲ぶ 幼い頃から当たり前のように聞いていた声
2013年6月13日、声優の内海賢二さんががん性腹膜炎のため75歳で亡くなりました。多くの洋画の吹替を担当し、アニメでは代表作に『Dr.スランプ アラレちゃん』の則巻千兵衛、『北斗の拳』のラオウなど。
幼い頃から当たり前に存在していた声

6月13日は、2013年にがん性腹膜炎のため75歳で亡くなった声優、内海賢二(うつみ・けんじ)さんの命日です。1950年代からラジオドラマなどで声優としての活動を開始し、50年以上アニメや洋画の吹き替え、ナレーターなど第一線で幅広い活躍を続けた声優界の草分け的な人物で、多くの印象的な役を演じました。また経営者としても声優事務所の賢プロダクションを立ち上げ、苦労しながらも後輩たちの活躍の場を広げるために尽力した声優界の功労者でもあります。幼い頃からごく当たり前に内海さんの声に親しんできた、ライターの早川清一朗さんが追悼します。
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1960年代から2010年の間にアニメを見ていた人間ならば、おそらく内海さんのひょうきんさと重厚さを合わせ持つ声が、心のどこかにしまい込まれているはずです。
筆者の心にもたくさんの内海さんの声が刻まれていますが、なかでも特に印象深いのは、『Dr.スランプ アラレちゃん』の則巻千兵衛と『北斗の拳』のラオウのふたりです。ギャグアニメのメインキャラと世紀末覇王という両極端なキャラクターをごく自然に演じておられた内海さんの演技力を、どのように形容すればいいのか分かりませんが、多分子供の頃に気づいていたら「すげえ!」と言っていたと思うので、この一声をもって代えさせていただければと思います。
そして内海さんの記憶はアニメだけにはとどまりません。洋画ではスティーブ・マックイーンやジャック・ニコルソン、ダニー・グローヴァ―など数多くの名優の吹き替えを長く担当されており、少し昔の映画を見れば、簡単に内海さんの声と息吹を聞くことができます。在宅中に洋画をなんとなく見ていると不意にTVから内海さんの声が流れてくることもしばしばで、もう亡くなって7年が経過したという事実をいまひとつ現実のものとして受け入れきれない自分がいます。小さいころから当たり前のように存在していて、今も存在し続けている。それが筆者にとっての内海さんなのです。