任天堂の「神対応」伝説 スイッチ2抽選で見せた「線引き」とは なお伝説は事実の模様
任天堂の「神対応」といえば、数々のエピソードが語り継がれています。そうしたなかスイッチ2の販売に関し、とあるユーザーへの対応が大いに話題となりました。対応するか否か、任天堂はどこで線引きしているのでしょうか。
「神対応」で知られる任天堂 なぜ今回は対応拒否したのか?

2025年5月、「Nintendo Switch 2」(以下、スイッチ2)の抽選販売をめぐり、SNS上ではとある投稿者による、余命宣告を受けた子どものために購入優先枠を設けてほしいと任天堂へ要望したことの顛末が大きな議論を呼びました。投稿には任天堂からの返信内容もあわせて掲載されており、そこには「特別枠でのご購入はできかねます」と丁寧ながらも明確に断る文面が示されていました。
この一件が注目を集めた背景には、任天堂がこれまで築き上げてきた「神対応」のイメージがあると考えられます。任天堂は子どもに寄り添い、時にポリシーを超えた善意ある行動を取ってきた企業と思われており、「任天堂なら応えてくれるのでは」と期待する声が少なくなかったからです。
では、任天堂は本当にこれまで「神対応」をしてきたのでしょうか。答えは「はい」です。
たとえば、1983年に発売された「ファミリーコンピュータ」の修理サポートは2007年まで続けられ、24年という異例の長期対応がなされました。ほかの任天堂製品も、NINTENDO64を除けばすべてサポート期間が10年以上に及び、家電やゲーム機としては異例の対応といえます。
海外でも「神対応」はありました。米国の清涼飲料水「マウンテンデュー」の、1992年に実施された懸賞キャンペーンの「当たり」である「スーパーファミコン」の引換キャップを、あるユーザーが2014年に発見します。これをRedditに投稿したところ、それを見た任天堂が反応し、新品のスーパーファミコンと「Wii U」を贈ったのです。
日本国内でも、2000年代の「ニンテンドーDS」や「Wii」全盛期には多くの逸話が生まれました。たとえばWiiリモコンによる事故報告が多発した際には、2007年から2014年までのあいだ、専用ジャケット(保護カバー)を無償配布するという対応を取ったことは、多くの人が記憶しているでしょう。
また、小学生の男の子がニンテンドーDSを壊してしまい、接着剤で直そうと試みたものの悪化させてしまったケースでは、子ども自身が任天堂に送ったことで、なんと修理代が無料になったという話もあります。「自分で直そうとして、がんばって送ってきてくれたから」という言葉が添えられていました。
さらに2010年代には、『テトリス』を愛するおばあちゃんのために、故障した3台目のゲームボーイに代わる新品が送られたという話もありました。修理用部品がすでになく、修理はできなかったものの、倉庫に眠っていた最後の新品が見つかり、丁寧な手紙を添えて返送されたそうです。
これらの「神対応」と今回の一件とで、何が違うのでしょうか。大きな違いは、過去の対応がいずれも「すでに発売され、広く流通した製品」に対して行われたものであり、他のユーザーに不利益を与えるものではなかったという点です。すでに購入済みの製品や、昔の懸賞に対する対応であり、公平性が損なわれることはありませんでした。
しかしスイッチ2は、いままさに抽選販売が行われている新製品です。在庫が限られているなかで、特別扱いをすれば他の応募者の落選に直結する恐れがあり、一度例外を認めれば、類似の要望が殺到する事態も予想されます。任天堂が掲げる「公平な抽選」というルールの根幹が揺らいでしまうのです。
加えて、これまでの「神対応」はSNSや報道で称賛される形で広まり、任天堂の企業イメージを高めてきました。一方、今回の「対応しない対応」については、ネット上を見る限り称賛や批判一辺倒になっている様子はなく、さまざまな意見が交わされています。それだけ判断材料に乏しいともいえ、そうしたなかで特例対応を行えば、これまで培ってきた信頼までも損なわれかねません。
任天堂が「このような回答しかできず心苦しい限りではございますが」と述べたように、今回は「神対応をしない」ことこそが、企業としての責任ある判断であったといえるでしょう。
(多根清史)