キシリアは本当に極悪人? 見方を変えると見えてくる本来の「素顔」
「キシリア・ザビ」といえば非情の野心家、という印象かもしれませんが、『ジークアクス』の描写で多くの人の見る目が変わりつつあるようです。しかし、原典たるファーストにおいても、実は端々にその素顔をうかがわせる描写がありました。
キシリアは本当に非情な悪役なのか?

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』では、原典となる『機動戦士ガンダム』のキャラクターが登場するたびに話題となっています。そのなかでも最近、注目を集めているのが「キシリア・ザビ」でしょうか。
キシリアはザビ家の長女で、上掲の2作品のほか、同じく「一年戦争」を描いた『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(作:安彦良和/原案:矢立肇、富野由悠季/メカニックデザイン:大河原邦男/KADOKAWA)でも、長男である「ギレン・ザビ」とは主導権争いをしています。それは兄弟のなかで唯一、キシリアがギレンと争うだけの政治的手腕を持っているからでした。
次男である「サスロ・ザビ」は物語開始前にすでに故人となっており、三男の「ドズル・ザビ」は政治に興味のない軍人、末弟の「ガルマ・ザビ」は温室育ちの気質ゆえに兄弟で争うことを良しとしません。それゆえザビ家では、ギレンとキシリアの対立が際立っているわけです。
このギレンとキシリアを比べた時、両者とも冷酷非情な一面が共通していました。そして何よりも自分が一番であるという意識が強いのでしょう。そのために一歩も引かず争いが起こるわけです。
そうはいっても、「ジオン公国」を勝利させるという部分においては共通の認識を持っていました。だからこそ戦争中は腹を探り合いながらも、表立って亡き者にしようという行動には出ません。『機動戦士ガンダム』においてそのバランスが崩れたのが、ア・バオア・クーでの戦いでした。
この最終防衛線での戦いで、ジオンは新兵器のソーラレイにより「地球連邦軍」の戦力の大半を失わせることに成功します。これにより戦況はジオンの勝利に傾きました。この時、キシリアは自らの手でギレンの暗殺を決行します。
しかし、これが結果としてジオンの敗北を決定的なものにしました。ア・バオア・クーの防衛網はギレンの的確な戦略によって支えられていたからです。キシリアの指揮では連邦軍の猛攻には耐えられず、逆転の機会を与えることになりました。
キシリアはこの時点でも最終的な勝利をあきらめておらず、自分が脱出することでジオンの温存していた戦力による逆襲をはかります。ところが、この計画も「シャア・アズナブル」がキシリアを暗殺するという展開により水泡に帰しました。
こう振り返ってみると、キシリアもただの悪人のように思えます。もっとも、これは早計な考えかもしれません。それはキシリアの行動のいくつかを見ていけば、意外な一面を考察できるからです。