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アニメ勢は知らない『ガンダム08小隊』小説版の衝撃展開 「露悪趣味では?」vs「必要な描写」

マグミクスが配信した「『ガンダム』性暴力、自死、爆弾で吹き飛ぶ足…小説版『08MS小隊』が問う『戦争フィクションの罪』」という記事に多くの反響がありました。アニメ版では描かれなかった過酷な戦争描写について、「フィクションで戦争を描く責任」をめぐり読者から深い議論が展開されています。

アニメ版重要キャラに訪れた悲劇

『機動戦士ガンダム 第08MS小隊(上)』原案:矢立肇/著:大河内 一楼(角川スニーカー文庫)
『機動戦士ガンダム 第08MS小隊(上)』原案:矢立肇/著:大河内 一楼(角川スニーカー文庫)

 マグミクスが配信した「『ガンダム』性暴力、自死、爆弾で吹き飛ぶ足…小説版『08MS小隊』が問う『戦争フィクションの罪』」という記事に、多くの反響が寄せられています。戦争をフィクションで描くことについて、読者たちからさまざまな視点での考察が展開されました。

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 元となる記事では、大河内一楼氏による小説版『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の独自展開を紹介しました。アニメ版では快活な少女として活躍するキキが、小説版では連邦軍兵士からの性暴力を受けて自死するという衝撃的な展開や、幼い少女が爆弾で足を失うといった過酷な戦場描写を解説しました。

 特に注目したのは、主人公シローが当初、戦争ドラマ「キャプテン・ジョー」に影響を受けて戦場をカッコいいものと考えていたという設定です。このドラマは戦意高揚ドラマとされ、戦場をカッコよく兵士をヒーローとして描く内容で、シローは純粋にジョーに憧れ、この戦争は正義のためだと信じていました。しかしキキの悲劇をきっかけに「自分がしていたはずの正義の戦争は、ただの殺し合いにすぎなかった」「正義の戦争なんてものは、どこにもない」と気づくのです。

 記事では、フィクションの戦場ドラマに影響を受けていたシローが現実を突きつけられる構造を通じて、小説版が「フィクションで戦争を知ることの難しさ」という視点を加えていると分析。制作者も鑑賞者も戦争を直接知らない世代になった日本において、「戦場に憧れを持つような作品でいいのか」という葛藤を制作者は持っているものではないか、むしろ、そういった葛藤こそ持つべきなのではないかと論じました。さらに「戦争自体、殺人という巨大な犯罪」という作中の言葉を引用し、戦争には正義はなく多くの人間を犠牲にする犯罪であると描いていることが、アニメ版との決定的な違いだと解説しました。

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 読者からはさまざまな意見が寄せられ、あるガンダムファンは『08MS小隊』について、局地戦を続けていくなかで劣悪な環境で兵の不満が爆発する様子など、それまであまり描かれなかった連邦軍の組織としての一面が強く描かれたことや「人間の生の感情が見れた」ことを高く評価しています。

 またガンダム作品における戦争描写の在り方について多角的な意見が寄せられています。ある読者は、近年のガンダム関連作品では、「露悪趣味が蔓延している」と批判しつつも、「軍隊は正義の味方ではない」というのは、故・神田武幸監督(アニメ『08MS小隊』第1~5話担当)が一貫して描いていたことだとして、リアルな戦争描写そのものの必要性は認める見解を示しました。

 表現者の責任について論じた読者は、軍隊や兵器への憧れは成長の過程で多くの男の子が持つものであり「それ自体は単純に否定していいものではない」としながらも、フィクションと現実の違いを「きちんと理解することが重要」だと指摘。宮崎駿監督を例に挙げて、兵器を多数描きながらも「思想的には平和主義者」である複雑さを理解したうえで作品を鑑賞する重要性を説いています。

 戦争をフィクションで描くことの責任と葛藤について、読者たちの多様な視点が集まった今回の反響は、エンターテインメント作品が抱える本質的な課題を浮き彫りにしたといえるでしょう。

(マグミクス編集部)

【画像】えっ、こんな可愛い少女が“性暴力”に…こちらが小説版で悲しい結末を迎えた『ガンダム』ヒロインです(4枚)

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