『マッサン』米女優(40)3回目の朝ドラ『ばけばけ』では小泉八雲の11歳年下「美人記者」役? 史実見ると「だいぶ重要」
シャーロット・ケイト・フォックスさんが朝ドラ『ばけばけ』で演じるのは、アメリカを代表する女性ジャーナリストがモデルのキャラのようです。
3度目の朝ドラで演じるのは?

2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し『怪談』『知られぬ日本の面影』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え数々の怪談を語った妻の小泉セツさんの生涯をモデルにした物語です。
本作には、2014年の『マッサン』でヒロイン役を務め、2016年の『べっぴんさん』に続き3回目の連続テレビ小説出演となる、シャーロット・ケイト・フォックスさんが登場することが発表されています。朝ドラファンには、うれしいキャスティングでしょう。
彼女が演じるのは、アメリカに住んでいた頃の「レフカダ・ヘブン(トミー・バストゥ)」の同僚の新聞記者「イライザ・ベルズブランド」という人物です。イライザは『ばけばけ』公式サイトで、「聡明で、世界を飛び回る行動力を兼ね備えた“パーフェクトウーマン”。ヘブンに日本行きを勧める」と説明されています。ラフカディオ・ハーンさん(1850年~1904年)がモデルのヘブンに影響を与えるイライザには、モデルはいるのでしょうか。
名前の響きやヘブンとの関係性から考えると、イライザのモデルはエリザベス・ビスランドさん(1861年~1929年)という、ルイジアナ州出身の女性ジャーナリストだと思われます。ビスランドさんは、1882年に当時ニューオーリンズで新聞記者をしていたハーンさんが書いた記事に影響されました。そして、21歳でハーンさんが勤務していたタイムズ・デモクラット社に入社します。
アメリカの女性ジャーナリストの草分け的存在で、絶世の美女としても知られるビスランドさんは、1887年頃にニューヨークに移住してさまざまな雑誌、新聞に寄稿し、1886年創刊の雑誌「コスモポリタン」の編集者になりました。
そして1889年11月14日、ビスランドさんは有名な小説『八十日間世界一周』(著:ジュール・ヴェルヌ)をモデルとする「コスモポリタン」の世界1周企画の旅行に出発します。80日間という期限があるだけでなく、ニューヨーク・ワールド紙の女性記者ネリー・ブライさんと、どちらが先に世界一周を達成するかを競うという、過酷な企画だったそうです。
対決の結果としては、ビスランドさんは小説よりも早い76日で世界を一周するも、それを上回る72日という記録を出したブライさんに負けました。しかし、ビスランドさんはその旅行でさまざまな貴重な体験をし、なかでも途中で訪れた日本を気に入って「コスモポリタン」で12ページにわたる特集記事を書いています。
さらに、ビスランドさんは日本での体験を元同僚のハーンさんに語りました。ハーンさんは1884年にニューオーリンズで開かれた万博の展示や、英訳版『古事記』ですでに日本に強い興味を持っており、その後訪日を決意します。
そして、1890年4月に新聞社の特派員として横浜に到着したハーンさんは、8月に『古事記』の舞台である「神話の国」島根県を訪れ、そこで尋常中学校の英語教師の職を得ました。その後、1891年2月に女中として働きに来た小泉セツさんと出会い夫婦となります(1896年に正式に結婚、小泉八雲に改名)。
ハーンさんは来日後も、ビスランドさんと生涯にわたって手紙のやり取りを続けていました。そして、ビスランドさんは1904年にハーンさんが亡くなった後の1906年に、自ら編集も担当した伝記『ラフカディオ・ハーンの生涯と書簡(The Life and Letters of Lafcadio Hearn)』を刊行します。この本の収益は、残されたセツさんや小泉家の子供たちに贈られたそうです。
さらにビスランドさんはその後に何度か日本を訪れ、そのたびに小泉家を訪問したといいます。史実通りなら、フォックスさん演じるイライザは、『ばけばけ』の物語後半まで登場しそうです。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『セツと八雲』(著:小泉凡/朝日新聞出版)、『小泉セツ 八雲と「怪談」を作り上げたばけばけの物語』(三才ブックス)、『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』(著:工藤美代子/毎日新聞出版)
(マグミクス編集部)
