マグミクス | manga * anime * game

SFアニメに描かれた「特攻」と戦争の記憶。アトム、ガンダム、庵野監督作品にも…

庵野秀明監督のアンチテーゼ作『トップをねらえ!』

『トップをねらえ!』Blu-ray Box(バンダイビジュアル)
『トップをねらえ!』Blu-ray Box(バンダイビジュアル)

 SFロボットものは、テクノロジーの進化をモチーフにしたものがほとんどです。また、人類はテクノロジーの進化に伴い、大量破壊兵器を使った近代戦を行なうようになりました。SFロボットものには、テクノロジーの進化による戦争の恐ろしさを伝える一面もあるように思います。

 そんなSFロボットものの系譜のなかで、アンチテーゼ的な存在となっているのが、庵野秀明監督の監督デビュー作『トップをねらえ!』(1988年~1989年)です。さまざまなSF作品やスポ根ドラマなどのパロディとして楽しめる『トップをねらえ!』ですが、それでもクライマックスは熾烈な局面を迎えます。

 落ちこぼれの女子高生だったノリコは人類最強兵器「ガンバスター」に乗って、強大な侵略者との最終決戦に挑みます。直情タイプのノリコは単機での特攻を仕掛けようとしますが、冷静沈着なカズミお姉さまに諌められます。単機では帰還できないが、2機でなら帰還の可能性があると、2号機でカズミお姉さまは並走します。

「必ず帰ってくる」というふたりの強い気持ちが、奇跡を生むことになります。それまでの日本のSFアニメにはなかった感動的なエンディングが、『トップをねらえ!』のラストには待っています。

生きて帰ることを模索した「特攻兵」も実在

 当然ですが、戦時中に実際行われた「特攻」は凄惨さを極めました。鴻上尚史氏が執筆した『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)を読むと、戦争のシビアな実相に触れることができます。

 特攻兵の多くは断れない状況下で志願させられていたこと、特攻機は戦争末期になるにつれて整備不十分だったこと、重たい爆弾を積んでいたため敵艦隊に体当たりする前にほとんどの特攻機が撃墜されてしまったこと……などが明かされています。

 劇作家、演出家として活躍する鴻上氏の文章はとても読みやすいので、関心のある方はぜひ手に取ってみてください。特攻隊に選ばれながら、9回出撃して、9回帰還した元特攻兵・佐々木友次さんの、「どんな状況下でも必ず生きて帰る」という希望を失わずにいた心の持ち方には、胸を打つものがあります。また、鴻上氏は特攻で亡くなった方たちを否定することは決してせず、特攻を生み出す戦争とそれを容認する社会の恐ろしさについて掘り下げています。

『アトム』には再登場の構想があった

 最後にもう一度、『鉄腕アトム』の逸話を。

 モノクロ版の最終回で悲劇的な最期を遂げたアトムですが、原作者の手塚治虫氏はもうひとつの代表作『火の鳥』の最終章で、アトムを再登場させることを構想していたそうです。未来と過去とを行き来する火の鳥が、アトムのいる時代に現われるというものだったようです。

 もしかすると、自己犠牲を払う覚悟を決めたアトムは、その直後に火の鳥と出会ったのかもしれません。不思議な力を持つ火の鳥に触れたアトムは生まれ変わり、人間の姿になって地球に戻ってくる。そんなアイデアを、手塚氏は考えていたのかもしれません。

  終戦記念日の今日、SFアニメや特撮ドラマにも、現実の戦争をモチーフにした作品が多いこと、そして現実の戦争は悲惨さを極めていたことを頭の片隅に留めておいてください。

(長野辰次)

【画像】見る者に戦争を考えさせる、「特攻」を描くアニメ・特撮作品(5枚)

画像ギャラリー

1 2