マグミクス | manga * anime * game

深夜に届く『恐怖新聞』がTVドラマ化。70年代日本を席巻した「オカルトブーム」とは

ユリ・ゲラーが来日し、ブームは沸点に

『うしろの百太郎』Kindle版第1巻(講談社)
『うしろの百太郎』Kindle版第1巻(講談社)

 つのだじろう氏は『恐怖新聞』とほぼ同時期に、『うしろの百太郎』を講談社「週刊少年マガジン」で連載スタートさせます。主人公の後一太郎は、霊能犬のゼロや主護霊の「うしろの百太郎」に助けられながら、やはり数々の心霊体験に遭遇します。『恐怖新聞』と『うしろの百太郎』はどちらも大人気を博し、つのだじろう氏はオカルト漫画の巨匠となっていきます。

 それにしても、1970年代前半のオカルトブームは、凄まじいほどの盛り上がりでした。小学校の学級文庫には、なぜかオカルト評論家の中岡俊哉氏らが執筆した『世界の怪奇スリラー全集』(秋田書店)や、楳図かずお氏の恐怖マンガが並んでいました。1973年4月からは「木曜スペシャル」(日本テレビ系)が始まり、矢追純一ディレクターによる「UFOシリーズ」がたびたびオンエアされました。翌1974年には超能力者ユリ・ゲラー氏が来日。子供たちはこぞってユリ・ゲラー氏をまねて、スプーン曲げに挑戦したのでした。

 さらにオカルト映画『エクスシスト』(1973年)が、日本でも1974年に公開されます。悪魔に取り憑かれた少女の首が180度回るシーンには、誰もが悲鳴をあげずにはいられませんでした。東宝の特撮映画『ノストラダムスの大予言』(1974年)が公開されたのも、この年です。マンガ、本、TV、映画……。あらゆるメディアが、オカルトものであふれかえっているという状況でした。

超常現象の七割は疑うべし

 文明開化が進んだ明治時代以降、日本では何度も心霊ブームが起きていますが、1970年代前半の一大オカルトブームは、それまでの高度経済成長の反動があったのではないかと言われています。

「オカルト」という言葉には、ラテン語で「隠されたもの」という意味があります。敗戦から復興した日本は高度経済成長を遂げ、物があふれる豊かな社会になりましたが、受験戦争や公害など、社会の歪みも目立つようになりました。手に触れることのできない、精神的な世界に関心を持つ人たちも少なくなかったようです。

 そんなオカルトブームを背景に、多額なお金を騙し取る「霊感商法」もはびこり、問題視されるようになります。オウム真理教の幹部たちは、高学歴だったにもかかわらず、教祖・麻原彰晃の唱える荒唐無稽なハルマゲドンをすっかり信じ込んでしまいました。科学的に実証できない「オカルト」に触れる際は、メディアリテラシー的な視点を忘れないようにしたいものです。

 先述したオカルト評論家の中岡俊哉氏は、「心霊写真」ブームや「こっくりさん」ブームも起こしていますが、その一方では「七疑三信」をモットーにしていました。あらゆる超常現象に対し、七割は疑い、三割だけ信じるというスタンスだったそうです。ブームの先導役でもあった中岡氏の言葉だけに、実際にはもっともっと厳しい目を持つ必要があるでしょう。

 現代社会を舞台にした連続ドラマ『恐怖新聞』の主人公・小野寺詩弦(白石聖)は、夜ごとに届く「恐怖新聞」を、果たしてどのように受け止めるのでしょうか。

(長野辰次)

●土ドラ「恐怖新聞」第1話 8月29日(土)よる11時40分スタート(東海テレビ公式)

【画像】あなたは憶えてる? 「オカルトブーム」全盛期を飾った作品たち(6枚)

画像ギャラリー

1 2