前代未聞の漫画に挑む「ヤンジャン」編集者・李さん「リアル版バクマン。を楽しんで」
「ぶっつけ本番」で箱根駅伝のたすきをもらう緊張感

──「MILLION TAG」では、作家の方とどう向き合いたいと考えていますか?
李 まず、編集者として「期間が限られている」というのが非常に大きなポイントだと感じています。普段の仕事だと、「この作家さんは今年中に連載を目指そう」「この作家さんは年単位で時間をかけて、連載する体力、身に付けさせよう」など、作家さんの性質や実力に合わせてプロデュースを考えることが多いです。
しかし今回は、出会ってからわずか半年で適性や資質、ハマる企画を見極めなければいけないので、いつも以上の速度、精度が問われることになりますね。僕のなかでは、「ぶっつけ本番で箱根駅伝のたすきをもらう」というイメージを持っています。ペース配分を間違えると、まずいことになるだろうという緊張感があります。
──そんな新しいチャレンジとなる「MILLION TAG」に挑むことは、李さんにとってどんなメリットがありますか?
李 デジタル媒体をはじめとしてマンガを読める場所が増えたことにより、かつてのように紙の雑誌に掲載されるだけで十分な宣伝を果たせるという時代ではなくなっています。時には編集者が自ら広告塔となって、前に出ないといけないという意識も常にありました。「MILLION TAG」のような企画で注目を集めることで、担当作品が視聴者の方の目にとまったり、タイトルを知ってもらう機会が増える。さらに、私自身も今までにはない手段で「才能」と出会う可能性が広がることが、大きなメリットだと思います。
また、マンガ編集者の仕事を見てもらうことで、持ち込みをする作家さんにも安心感を持ってもらいたいですね。僕は「ヤングジャンプ」編集部を代表して参加するので、青年マンガ仕事がどのようなものなのかを知っていただけたら嬉しいです。
──逆に、挑戦者にとっては、どんなメリットがあるとお考えですか?
李 マンガ業界は好調に見えますが、ヒット作の裏で注目されることなく終わる作品もたくさんあります。デジタルコミックも増えているので、新刊の数は10年前よりはるかに増加しているのではないでしょうか。そんななかで、無名の作家の新連載を、「ここで読めるよ」「この棚に単行本があるよ」といかに認知してもらうか。これが非常に重要なんです。
「MILLION TAG」では制作過程から、多くの読者に注目される状態で作品をスタートできます。連載開始前から注目される作家や作品となれるチャンスがあるということ。そこにやりがいを感じていただけるのなら、ぜひ挑戦してもらいたいです。