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『東京ゴッドファーザーズ』BSで放映 今敏監督はコロナ不況を予見していた?

海外でも高い人気を誇る今敏監督の名作アニメ『東京ゴッドファーザーズ』が、BS12で12月19日に放映されます。今敏監督作のなかでは地味に見える作品ですが、コロナ禍の状況で見直すと非常に身につまされる内容となっています。家もお金もない3人のホームレスたちが、それでも懸命に守ろうとしたものは何だったのでしょうか?

今敏監督と信本敬子さんとの共同脚本作

『東京ゴッドファーザーズ』は、3人のホームレスがクリスマスの夜に赤ん坊を拾ったところから物語が動き出す。(C) 2003 今 敏・マッドハウス/東京ゴッドファーザーズ製作委員会
『東京ゴッドファーザーズ』は、3人のホームレスがクリスマスの夜に赤ん坊を拾ったところから物語が動き出す。(C) 2003 今 敏・マッドハウス/東京ゴッドファーザーズ製作委員会

 クリスマスシーズンにぴったりの劇場アニメがTV放映されます。夢の世界を舞台にした『パプリカ』(2006年)などで世界的に知られる今敏監督の『東京ゴッドファーザーズ』(2003年)です。2021年12月19日(日)の19時から、BS12の「日曜アニメ」の枠でオンエアされます。また、名作を映画館で観るプロジェクト「プレチケ」(主催:フィルマークス)では、12月24日(土)に東京、大阪、名古屋で一夜限りの特別上映を企画しています。

 劇場デビュー作『パーフェクトブルー』(1997年)をはじめ、今敏監督の作品は現実と虚構が入り乱れる多重構造の物語で、多くのファンを魅了してきました。『パーフェクトブルー』はダーレン・アロノフスキー監督の『ブラック・スワン』(2010年)に、『パプリカ』はクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(2010年)に影響を与えたと言われています。Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』が話題となっているヨン・サンホ監督も、今敏作品のファンであることを公言しています。

 海外からも高く評価され続けている今敏監督ですが、オリジナル作品である『東京ゴッドファーザーズ』は、非ファンタジー作品ゆえに地味な作品と思われがちです。でも、改めて見直すと、現実世界を見つめる今敏監督のまなざしは先見性にすぐれ、また今敏監督ならではの多重構造の物語でもあることにも気づきます。今敏監督と共同で脚本を執筆したのは『カウボーイビバップ』の信本敬子さん。今敏監督、信本敬子さん、才能あるおふたりが早くに亡くなられたことが本当に惜しまれます。

3人のホームレスが赤ちゃんの守護天使に

 本作の主人公となるのは3人のホームレスたちです。ギンちゃん(CV:江守徹)はギャンブルがきっかけで借金を重ね、路上生活を送るようになりました。元ドラァグクイーンのハナちゃん(CV:梅垣義明)は、愛するパートナーを失ったことが原因で勤め先を辞めてしまいました。ミユキ(CV:岡本綾)は父親との間に葛藤を抱える家出少女です。

 東京のどこにも居場所のない3人は、狭い段ボールハウスで肩を寄せ合うように暮らしています。そんな3人は、クリスマスの夜にゴミ集積所で赤ちゃんを見つけます。ギンちゃんは警察に届けようとしますが、母親になりたいという願望を持つハナちゃんは赤ちゃんを手離そうとしません。仕方なく3人は雪が降り積もるなか、赤ちゃんの母親を探し回ることになります。

 日本のアニメーションでホームレスを主人公にした作品は、非常に珍しいと思います。3人は家も仕事もなく、お金も携帯電話も持っていません。それでも3人は、赤ちゃんを聖夜にちなんで「清子」と名付け、母親を探し続けます。

 コロナ不況によって、仕事を失った人、収入が激減した人、居場所を失った人が少なくありません。炊き出しに並ぶギンちゃんたちも経済的な余裕はまるでありませんが、赤ちゃんのことを気遣う優しさだけは持ち続けています。貧しくとも人間らしさまでは失うことのない3人の心の温かさには、ホッとさせられます。次々と予期せぬトラブルが3人に襲い掛かりますが、その度に不思議な奇跡が起きることになります。

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