発売から35周年の『リンクの冒険』が異色だった3つの理由 緊張感ある立ち回りが魅力に
ファミコン ディスクシステム用ソフト『リンクの冒険』は、2022年1月14日で生誕35周年を迎えました。本作には「ゼルダの伝説」シリーズを通して異色とされる3つの要素が込められていました。
「ゼルダの伝説」シリーズ初期に生まれた異彩を放つ名作
任天堂が手掛ける人気アクションアドベンチャーゲーム「ゼルダの伝説」(以下、ゼル伝)は、ファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)からNintendo Switchまで、任天堂のさまざまな家庭用ゲーム機で実に30作近いタイトルが作られてきました。
そのなかでも、35年前の今日、1987年1月14日にディスクシステム用ソフトとして発売された『リンクの冒険』は、前作や後継作ともテイストの異なるゲームシステムを採用したことで異色な出来栄えとなっています。今回は『リンクの冒険』に見られた各要素のうち、とりわけて際立った3つのポイントに注目し、本作が異彩を放つ理由について紹介します。
●剣技と魔法がものを言う、アクション重視の戦闘
初代『ゼルダの伝説』では、ゲーム中に入手したアイテム(弓矢・爆弾・ブーメランなど)を使って多様な攻撃を繰り出すことができたものの、剣技については突き攻撃しか行えませんでした。
しかし、次作となる『リンクの冒険』はゲームシステム(後述)の変更に伴ってアクション性が大々的にパワーアップ。回転斬りこそ実装されていませんが、攻撃時に上段・下段の概念が加わったことで、モンスターとの戦闘に新たな駆け引きが生まれたのです。
例えば、鉄壁の防御を誇る強敵「アイアンナック」を倒すなら、盾を構えていない部位を狙って突きを繰り出す。リンクを軽々と飛び越える跳躍力に長けた「フォッカー」は、ジャンプ時に下から突き上げてトドメを刺す……などなど、モンスターの特性を踏まえた上で適切に剣技を使いこなす必要がありました。
とはいえ、剣技だけだと高難度を誇る『リンクの冒険』をスムーズに攻略することは簡単ではありません。そこで大いに役立ったのが「魔法」です。
ステータスを強化するオーソドックスな補助魔法をはじめ、剣技以上の火力をもたらす攻撃魔法、さらにはリンク自身が妖精へと姿を変える変身魔法まで、リンクは本編を進むごとに合計8種類の魔法を習得していきます。剣技と魔法を組み合わせ、ガノン亡き後も暴虐を尽くす魔族に立ち向かう。前作から一転、『リンクの冒険』は戦闘においてアグレッシブな立ち回りが求められました。
●トップビュー+サイドビューを巧みに融合
『ゼルダの伝説』は画面を上から見下ろすトップビュー中心だったのに対し、『リンクの冒険』ではトップビューとサイドビュー(画面が横から映し出される)が場面に応じて切り替わる仕様へと変更。上述の戦闘シーンを含め、町の探索、神殿攻略も横スクロールアクションゲームと同じ要領で進行します。
筆者が個人的に感心したのは、雑魚モンスターとのエンカウントシーン。本作ではマップ上を移動するモンスターと接触した際、直前にリンクが歩いていた場所(草原や山岳など)に合わせて戦闘時のフィールドも変化します。
フィールドの地形はそれぞれ異なるため、出現するモンスターによっては一方的な不利を強いられるリスクもある。その反面、リンクにとって有利なフィールドを選ぶことができれば、被ダメージを最小限に留めることもできる……といった具合に、幾度も繰り返される雑魚モンスターとの遭遇戦でも、サイドビューならではの立体的な地形にもとづいた戦いが楽しめました。
●育成パラメータを自分で指定する成長要素
モンスターとの戦闘で得られた経験値を溜めるとリンクが成長し、3種類(アタック・マジック・ライフ)のパラメータからレベルアップ時に1つを選んで強化できます。普段から剣技メインで戦闘を進めているならアタック、逆に魔法を主体にゴリ押しで挑むのが好きならマジックを選ぶ。パラメータ選択時の制限は特に存在せず、どの順番で育てるかはプレイヤー次第でした。
ただし、本作はゲームオーバー時に「最も数値が低いパラメータに合わせてリセットされる」という仕様のため、あまりに一辺倒な育て方をすると、かえってリンクが大幅に弱体化する危険も。ゆえにプレイ中は自然とバランスよくパラメータを割り振り、結果的に万能タイプのリンクへ仕上がることが多かったように思われます。
このような仕様のため、自由自在にリンクを育成できる……とまでは言えませんでしたが、シリーズ2作目という初期の時点でアクションに特化しつつ、さらにRPG的な側面も深めた本作の価値は、誕生から35年経った今もなお色あせていないと言って良いのではないでしょうか。
(龍田優貴)