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『ゴールデンカムイ』のヒロインは誰なのか問題 「すけべすぎるマタギ」を推す声も?

主人公もヒロイン候補?

さまざまな男たちを惚れさせて「ヒロイン」にしてきた鶴見中尉が表紙の『ゴールデンカムイ』DVD2巻(NBCユニバーサル)
さまざまな男たちを惚れさせて「ヒロイン」にしてきた鶴見中尉が表紙の『ゴールデンカムイ』DVD2巻(NBCユニバーサル)

●「江渡貝くぅぅん」は立派にヒロインを全うしました

 その他にヒロインとして大事な要素、「惚れた男への一途な愛」を全うしたのは若き剥製職人・江渡貝弥作(えどがい・やさく)でしょうか。わずか数話の登場ではありながらも、その癖の強さから読者に強烈な印象を植え付けました。死体の皮を用いた革細工製作に執心する、なんとも業の深い性をもつ江渡貝でしたが、自身を受け入れてくれた鶴見中尉には首ったけ。

「ファッションショー」の場面では華麗なる乙女仕草を見せつけ、また中尉の要望には職人として全力で応じます。炭鉱事故での最期まで、彼は鶴見への「愛と誠」を貫いたのです。一般社会においては到底受け入れられぬ性質の持ち主ですが、一途な愛の男でもありました。

●杉元もまた「ヒロイン」のひとりなのかもしれない

 ここまでまとめてきてお気付きの通り、『金カム』は誰の目線から見るかによって「ヒロイン」が決定される、流動的な物語といえるでしょう。杉元の目線に立てば、脱獄王・白石由竹が放っておけないヒロインに。あるいは、鶴見中尉を中心に据えてしまえば、屈強な軍人たちが軒並み彼に想いを寄せるヒロインへと様変わりしてしまうのです。

 もちろん主人公・杉元だって例外ではありません。猛り狂う豪雪のなか、アシリパさんに護られるときの杉元が見せる「ヒロイン」らしさも、またなかなかのものです。だったらもう「ヒロイン不在」なのでは、という正論が聞こえてきそうですが、それはすなわち「誰でもヒロインになり得る」ということでもあります。

『金カム』はさまざまなキャラクターのなかに「ヒロイン性」を見出す自由を読者に開いてくれたという点においても、傑作であることは間違いありません。なお2022年4月28日からは、「東京ドームシティ Gallery AaMo」にて『ゴールデンカムイ展』も開催されます。そこで明かされる情報によっては、また『金カム』のヒロイン論争に新たな展開が生まれるかもしれません。

(片野)

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