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『聖闘士星矢』のアテナはなぜ「1人で」敵中に乗り込むのか 沙織の身勝手ではなかった?

ヒントは沙織自身の過去にある……?

黄金の矢が胸に刺さった城戸沙織の命を救うために奮闘する星矢たちの活躍が描かれる、『聖闘士星矢』13巻(集英社)
黄金の矢が胸に刺さった城戸沙織の命を救うために奮闘する星矢たちの活躍が描かれる、『聖闘士星矢』13巻(集英社)

 筆者は、沙織が聖闘士たちに無関心に見える理由は「沙織の過去」と「思春期の少女らしい感性」にあると考えます。

 原作「十二宮編」で、アテナの盾の光に救われた沙織は、傷ついた星矢たちの安否を心配して、十二宮を駆け上がる行動に出ます。

 沙織はその時に「一人の少女として生きたかった」という内面を吐露しています。直後に、教皇に成りすましていたサガが自害したことで「普通の少女としては生きられない」ことを改めて自覚しますが、根底に「思春期の少女らしい感性」がある人物ということです。そして、沙織は星矢たちに対して負い目があります。

 自分がアテナだと理解していない幼少期、沙織は城戸光政の実子ではなく、孤児とされていた星矢たちを奴隷のように扱います。邪武を馬にして「乗馬」して鞭で叩き、四つんばいで歩かせるなど、わがまま放題の行動をしていたのです。城戸光政は、沙織が地上の愛と正義を守るべきアテナと知っていますが、沙織を止めたりはしていません。

 約2年間に百人の実子を子作りした行動を考えても、光政の倫理観や性癖は相当に歪んでいたと考えてもよく、沙織は祖父の行動を見て影響を受けたのだと思われます。

 しかし13歳の沙織には、そのような独善性は影を潜めています。「思春期の少女らしい感性」と照らし合わせた時に「幼少期に、自分はとてつもなく恥ずかしいことをしていた」と気づいたのではないでしょうか。

「負い目がある相手」に、気安く何かをお願いするのは難しいものです。沙織には「自分はアテナだから、聖闘士に守られて当然」という発想がなかったのでしょう。

 城戸邸に護衛の聖闘士を置いていないことも、十二宮編で星矢たちに「聖域ではいつ襲われてもおかしくありませんから、わたしを隙なく守りなさい」と命じないことも、ポセイドン編やハーデス編で、護衛を連れて行かずに自分ひとりで解決しようとすることも、「自分は聖闘士たちに何かを命じられるような、立派な存在じゃない。自分で何とかすべきだ」という「思春期の少女らしい感性」が根底にあるのではないでしょうか。

 実際、沙織はポセイドン編での激闘を終えた星矢たちを、これ以上苦しめたくないと戦いから外そうとしています。この時点での星矢たちは、最強の黄金聖闘士に匹敵する実力がありますから、ハーデスとの戦いが迫るなかでは自殺行為なのですが、それを貫こうとしているのです。

 劇中、沙織がアテナとして振る舞う場面が何度もありますが「内心の人間らしい弱さ」を外には出さず、心を殺して命じていたのだと考えると、沙織への見方が変わるように思えます。

(安藤昌季)

【画像】神々しすぎる!聖衣をまとった本気の「アテナ」の姿(7枚)

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