虚淵玄脚本の新感覚アニメ『バブル』 「出会い」は素晴らしいと思わされるSFアクション
生命と生命との触れ合いが、意外な化学反応を生む?

ダークな世界観で知られる虚淵玄氏の作品に、新鮮な活気をもたらしているのがアクションアニメを得意とする荒木哲郎監督の演出です。『進撃の巨人』での立体起動装置を使ったワイヤーアクションと同様に、ヒビキたちが見せるパルクールも迫力があります。
圧巻なのは、崩壊しかかった東京タワー上層部への登頂を試みるクライマックスです。パルクールの達人であるヒビキですが、未知の能力を持つウタとタッグを組むことで、さらにパワーアップ。前人未到の領域にまで、足を踏み入れることになります。単独では不可能だったことが、タッグでなら可能となります。ふたりの挑戦は、地球の運命すらも変えていくのでした。
人と人とが出会うことで、お互いに触発され、思いがけない力を発揮することになります。ヒビキやウタの目が覚めるようなアクションは、まさに生命の輝きを感じさせます。
アニメーションという言葉は、animate(生命を吹き込む)が語源であることを思い出させます。生命と生命とが触れ合う瞬間にも、意外な化学反応が起きるものなのかもしれません。
さまざまな障害を乗り越えていく主人公たち
物語は後半、空から泡が再び降ってくる「第二次降泡現象」が起き、激しい泡に覆われた東京から、ヒビキたちは脱出せざるをえません。そして謎めいていたウタの正体を、観客も知ることになります。
「バブル」と聞くと、1990年代初頭の「バブル景気」や「バブル崩壊」を思い浮かべる人がいるかもしれません。荒廃した東京の景観は、バブル経済が弾け、「失われた時代」が今も続く日本社会のようにも感じられます。人影のない街角は、コロナ禍の状況を思わせるものもあります。
でも、そんなディストピア化した街で、ヒビキもウタも重力に縛られることなく、踊るように駆け抜け、歌を歌うように軽やかに宙を跳びます。ふたりは物理的な障害物だけでなく、バブル崩壊やコロナ禍といった社会的な災害さえも軽々と飛び越えていくかのようです。
新しい出会いは、思いがけない化学反応を生み出すことになります。新感覚アニメ『バブル』は、出会いの面白さを楽しむ作品だと言えそうです。今までとは異なる座組みを体験した虚淵氏や荒木監督らが、これからどんな作品を創り出していくのかにも期待したいと思います。
(長野辰次)
●『バブル』Netflix版は4月28日(木)より全世界配信、劇場版は5月13日(金)より公開されます。
監督/荒木哲郎 脚本/虚淵玄、大樹連司、佐藤直子 キャラクターデザイン原案/小畑健 音楽/澤野弘之 企画・プロデュース/川村元気
声の出演/志尊淳、りりあ。、宮野真守、梶裕貴、畠中祐、千本木彩花、逢坂良太、羽多野渉、井上麻里奈、三木眞一郎、広瀬アリス
配給/ワーナ・ブラザース映画
(c)2022「バブル」製作委員会