みんな虜!『ゴールデンカムイ』鶴見中尉のカリスマ人身掌握術 読者もいつしか手中に?
みんな中尉にゾッコンLOVE
さまざまな顔を持ちすぎて、いったいどれが本当の彼なのか把握しかねる鶴見中尉ですが、彼に心酔する部下たちもまた、それぞれ違う中尉の姿を見ているのではないでしょうか。
たとえば月島基軍曹は父殺しで死刑囚として投獄されていたところを、鶴見中尉の尽力で釈放され、部下となりました。その際鶴見中尉が利用したのが、月島と恋仲だった幼なじみの娘「いご草」ちゃん。そもそも月島は彼女を自殺に追い込んだという理由で父を殺したのに、「彼女は生きて東京の名家に嫁いで暮らしている」と、鶴見中尉は告げるのです。しかし、後に日露戦争で同郷の兵士から、やはり彼女は亡くなっていると聞かされた月島は激怒。けれども鶴見中尉は、自分の工作が功を奏しているだけで彼女はやはり生きていると言い……話は二転三転して混乱します。
しかし、鶴見中尉が力説したように、すべては優秀な部下・月島を死刑から救うためについた嘘だということです。読者にも何が真実かはわかりませんが、鶴見中尉が月島を手中にするために策略を練ったことだけは確かなよう。その後、杉元と菊田特務曹長の出会いの過去編で「いご草ちゃん」が本当に生きていて、良家に嫁いでいることが示唆され、より「鶴見中尉の真意がわからなくなった」という声も出ています。
その他、鶴見中尉を敬愛するあまり、鶴見関連の行動がいちいち度を超えているのは鯉登音之進少尉です。鶴見中尉と月島軍曹のツーショット写真の、月島の顔部分を自分の顔に張り替えては悦に入るなど「鶴見中尉ラブ」すぎる鯉登少尉。中尉の前では冷静でいられず、声をかけられただけでも「キエエエッ!」と猿叫を発するほど取り乱してしまいます。
さらに鯉登は鶴見中尉と話すときは興奮のあまり早口の薩摩弁になってしまうため、まったく意味が伝わらず、月島軍曹を通訳に使う始末です。鶴見中尉に気に入られたいがため、彼と同じく刺青人皮を肌着のように身につけるも、せん(なめし)が甘いと言われてショックを受けるなど、とにかく鶴見中尉の前の鯉登少尉のあたふたぶりは、ずーっと見ていられます。
また、宇佐美時重上等兵も鶴見中尉に心酔しきっています。宇佐美は網走監獄に看守として潜入していたものの正体がバレてしまい、その罰として鶴見中尉に両頬のホクロにいたずら書きをされてしまいます。それをなんと入れ墨にして永久保存するほど、鶴見中尉のやることはすべてOKという人物なのです。
鯉登少尉も宇佐美も、実はそれぞれに鶴見中尉の衝撃的策謀の人心掌握術で心を捕まれているのですが、そこはまだ未アニメ化のため、ぜひ作品を見て確かめてみてください。それぞれ全然キャラの違う男たちを、しっかり調べ上げて的確な作戦で手中にした手腕は恐ろしくも惚れ惚れします。
鶴見中尉が虜にしたのは部下だけではありません。剥製職人の江渡貝弥作も、その手中に落ちたひとりです。剥製職人という表の顔に隠れ、密かに人間の皮で衣装を作っていた江渡貝は、秘密を知られた鶴見中尉を殺そうとします。けれども思いがけず才能を絶賛され、「僕の仕事をあんなに理解してくれる人は初めてかもしれない」と感動してしまうのです。
そこから、独特すぎるセンスで作った人皮服の「ファッションショー」へとなだれ込むのですが、その際の鶴見中尉の持ち上げ方は見事と言えるでしょう。「い〜ね〜!!時代の最先端だよ、江渡貝くぅん」「猫ちゃんのようにッ 猫ちゃんのように歩くんだ!!」「カワイイ カワイイ!!」と絶賛の嵐。
それまで決して公にできなかった秘密を手放しで褒めちぎってくれるのですから、江渡貝くんも、鶴見LOVEまで一直線。ついには鶴見中尉のために、偽の刺青人皮を作ることになります。ただしこれは単なる策略というより、普段から刺青人皮シャツを来ている鶴見中尉にとっても、同好の士を得た喜びのひとときだったのではないでしょうか。
あくまで日本の国防と未来のために「アイヌの金塊」を求め、大義のために動きつつも、その裏には妻子を失った悲しみもあった鶴見中尉。鶴見中尉を熱愛する人の数だけ異なる顔があり、本心は誰にもわからない人物だったのですが、実はファンの間では、完結直前の313話で見せたある表情が大きな話題となりました。その表情の理由は……ぜひその目で確かめてください。
(古屋啓子)