女性声優の体調不良での休養、増加の理由 原因は「求められること」の過度な多様化か
解決は容易ではない

おそらくは新型コロナウイルスも、女性声優の体調不良に大きな影響を与えています。同時に収録できる人間の数に制限があるため現場に新人を入れる機会が減少し、慣れた人材だけで仕事をするため収録にかかる時間が減少しました。それまでは1日あたり2~3個の現場を回るのが限界でしたが、倍近い数の現場に入ることが不可能ではなくなったのです。
さらに声優という仕事は、基本的に「仕事をもらう側」であることも負荷に拍車をかけています。定められた時間に求められた何かをこなす必要があるため、自分のペースでスケジュールを組むことが難しくなっています。人気のある声優であればあるほど、ひたすらに詰め込まれる仕事を次から次へとこなしていかなければなりません。精神的に疲弊するのも当然と言えるでしょう。
そして最も重要なのが、若手女性声優にとって、活躍できる時間は限られているという問題です。もちろん、人気と実力を兼ね備えた声優であれば、歳を取っても仕事の声がかかります。TVのナレーションや主人公の母親役などで、かつてヒロイン役を演じていた方がさらに円熟味を増した声を披露しているのを耳にすることはしばしばあるでしょう。しかしナレーションや母親役は、基本的にヒロインたちほど数が多くありません。そういった仕事に就けるまでの競争も、また尋常ではないのです。
自分が輝ける時間は限られているかもしれない。そのプレッシャーのなかで、仕事を断る勇気などなかなか持てるものではありません。断ればその仕事は他の人に行ってしまうのです。もしその仕事で自分以外の人がブレイクしたら、後悔してもしきれないでしょう。
それでも筆者は、声優に身体を大事にして欲しいと考えます。 自分が愛するキャラクターを演じていた声優たちが、肉体的に、精神的に苦しんでいる姿など見たくはないのです。
事務所に所属していることが多いとは言え、声優は基本的に個人事業主です。健康管理は自分の責任で行わなければいけません。体調が悪ければ病院に行く。疲れていたら短時間でもいいからリラックスする。その他にも整体や鍼灸など、体調を良くする手段は数多くあります。忙しさの隙間を何とか見つけて、心身を回復する手段を可能な限り実行して欲しいものです。
私たちは、声優たちの元気な姿が見たいのです。
体調不良を押してギリギリまで仕事をして、手遅れになった方々の二の舞いを踏んでほしくはありません。もう二度と。
(早川清一朗)