『ファイナルファンタジー』「悲劇のヒロイン」3選 仲間のために命を使う姿に涙!
村が焼かれ、母親を殺される、悪夢のような出会い…

エアリスとは違い、『ファイナルファンタジーIV』のリディアはもしかしたらそれほど悲劇のヒロインの印象が無い人もいるかもしません。リディアの悲劇はゲーム冒頭に起こるからです。
事件は、セシルとカインが、バロン王に幻獣討伐とミストのむらへボムの指輪を届ける任務を言い渡されるところから始まります。道中に立ちはだかるミストドラゴンを倒し、ミストの村へつくと、異変に気が付きます。バロン王から託されたボムの指輪によって、村が焼き払われてしまうのです。
そして、このミストの村にいたのがリディアでした。リディアは倒れた女性のそばで泣き叫んでいます。話を聞くと、母親のドラゴンが死んでしまったために、母親も死んでしまったというのです。そう、セシル達が倒したミストドラゴンはリディアの母親の幻獣だったのでした。バロン王に謀られたとはいえ、主人公に母親を殺され、故郷の村を焼かれたのが、リディアとの出会いでした。これ以上ない、最悪の出会いです。
その後リディアは、リヴァイアサンに飲み込まれパーティーから一時離脱。現実世界とは時の流れが違う幻界にて成長し、セシル達のピンチにかけつけます。その時使うのがお母さんと同じ幻獣、ミストドラゴンでした。母親を殺した自分をどうして助けるのかと尋ねるセシルに、もっと大きな運命が動いていると告げるリディア。悪夢のような出会いはあるものの、それを乗り越えて成長した姿の方が記憶に残り、むしろ強いヒロインのイメージがあるかもしれません。
●意思を持たない殺戮兵器
最後は『ファイナルファンタジーVI』のティナ。『ファイナルファンタジーVI』のオープニングといえば、魔導アーマーに搭乗したティナ達帝国兵が吹雪の中を歩いていくシーンが印象的ですが、この時ティナには意思がなく、帝国の殺戮兵器となっています。その後、氷漬けの幻獣と相対することで、反応が起き「あやつりの輪」がとれます。ようやく意思を取り戻しますが、今度は記憶がありません。
何故このようなことになってしまったのか、実はティナは人間ではありませんでした。幻獣界に迷い込んだ人間の女性と、幻獣マディンとの間に生まれた、言わば人間と幻獣のハーフ。悲劇はティナがまだ赤ん坊の頃に、幻獣界を帝国が襲ったことで起こります。
魔導の力を目当てに幻獣狩りをする帝国軍。幻獣界の長老は帝国軍を幻獣界から排除するべく、封魔壁の魔法で異物を排除し、人間界とのゲートを閉じることにします。その時、ティナやその両親は帝国軍もろとも幻獣界から閉め出されてしまいます。倒れているところを、帝国皇帝ガストラに見つかったティナ達。母親はおそらくその際に殺されたものと思われ、父親は帝国に捕まって魔導研究所で魔導の力を吸われ続けることになります。かくして、ティナは意思を持たない殺戮兵器にされたのでした。
主人公ロック達がこの事実を知り、魔導研究所に行くと、マディンは自ら命を絶ち魔石になることで、ロック達に魔導の力を託します。ティナがマディンと再会を果たしたのは、魔石となった後のことでした…。
物語の最後、ラスボスを倒すことで世界から魔法や幻獣が世界から消えていきます。父マディンの魔石が消え、そしてその血をひくティナも消滅してしまうかもしれないと言われるのです。ティナはそれでも魔導の力で空を飛び、仲間の飛空艇を導きます。最後まで仲間の為に力を使ったティナは、とうとう力を失いますが、人間としてその存在は消えることはありませんでした。絶望的な運命を宣告されてなお、愛する者達のために飛び続けたティナ。エンディングの最後、髪を風になびかせるティナの立ち姿は今でも心に残っています。
「ファイナルファンタジー」シリーズ、悲劇のヒロインたちを紹介しました。どのヒロインも過酷な人生を歩んでいますが、共通して言えるのは、運命に強靭な意思で立ち向かい、乗り越えてる姿を私たちに見せてくれていることではないでしょうか。物語としては間違いなく悲劇のヒロインではありますが、むしろ明るく前向きな印象が残っているのは、そのためかもしれません。
(田下広夢)