大ヒットマンガの「連載引き延ばし」が近年減ったように感じる理由
作品と漫画家の意向を重視する傾向も

もうひとつ考えておきたいのは、漫画家さんの活動期間についてです。もし20歳でデビューして60歳まで描くとすれば、漫画家としての活動期間は40年です。
通常、週刊連載であれば、年間に出せる単行本はだいたい5冊前後、月刊連載であれば3~4冊程度です。もし30巻ほどの長期シリーズを描くと、40年の漫画家人生のうち、週刊誌連載で6年、月刊誌連載であれば10年近くの期間を、その作品に費やすことになります。
さらに言えば、どんな才能あふれる漫画家さんでも、全盛期といえる期間は決して長くありません。鳥山明先生を見出した担当編集の鳥嶋和彦氏が後年、『ドラゴンボール』はフリーザ編で終わるべきだった、そこで終わっていれば『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』に匹敵する第三のヒット作を描けていたのでは、と語ったのは有名です。
かつてはヒット作品といえども、読者への露出の場は雑誌連載と単行本の新刊発売時がメインでしたから、多少の無理をしてでも長期連載していたのかもしれません。しかし再販の形態が多様化し、作品そのものの寿命が長期化した現在、むしろヒット作を描けている活力が衰えない間に、きちんと物語が終わるのであれば終わらせて、新作に取りかかったほうが最終的にヒット作の数が増える可能性もあります。
最後に、連載引き延ばしの有名な例として、本宮ひろ志先生の『男一匹ガキ大将』という作品を挙げたいと思います。同作は、ガキ大将・戸川万吉がさまざまな戦いを通じて、日本の不良の頂点に立つというお話で、1968年に創刊間もない「[m1]少年ジャンプ」を人気雑誌へと牽引した大ヒット作です。
連載時、富士の裾野での天下分け目の決戦で展開に行き詰った本宮先生は、いきなり敵が投げた槍を腹に受けた万吉に「こんなもんじゃ、人間なんてのわぁ」と叫ばせ、「完」と描いて失踪。同作を強引に終わらせようとしたのです。しかし人気作品を終わらせたくなかった編集部は、該当回の槍と「完」を、本宮先生に無断で消してジャンプ本誌に掲載します。
掲載号を見て驚き、失踪先から帰った本宮先生は、編集部の説得に応じて、連載を継続しました。しかし以降の展開に納得がいかなかったのか、その後発売された文庫版や電子書籍版では12巻以降をばっさりとカットしており、2018年に連載50周年記念として全22巻の電子書籍が刊行されるまで、後半部分は読めない状態が長く続いてしまいました。
もちろん今でも不人気による終了であれ、人気を集めてしまったゆえの引き延ばしであれ、商業誌に連載している以上、漫画家さんが思った形で作品を終えるのは難しいことでしょう。
それでも、「連載引き延ばし」をしないで完結を迎えていく昨今のヒット作を見ると、時代の流れは作品と漫画家さんの意向を重要視する方向に変化しつつあるのではないかと、期待を込めて思うのです。
(倉田雅弘)



