大ヒットマンガの「連載引き延ばし」が近年減ったように感じる理由
人気絶頂のなか、23巻で完結した『鬼滅の刃』のように、近年では人気作品の「連載引き延ばし」を行わず、作品をきれいに完結させる傾向を感じませんか? その理由を、マンガと作家を取り巻く環境の変化からひもといていきます。
環境の変化が作品の「寿命」を延ばしている?

去る2022年11月、和井健先生の『東京卍リベンジャーズ』が最終回を迎えました。2023年1月にはTVアニメ第二期「聖夜決戦編」のスタート、ゴールデンウィークには実写映画第二弾『血のハロウィン編-運命-」『血のハロウィン編-決戦-』の公開を控え、ますます人気沸騰が予想されるなかでの完結です。
これまで大ヒット作品と言われるマンガのなかには、物語としての落着は明らかについているのに、一旦の人気がおさまるまで、あるいは他メディアでの展開が終了するまで……といった事情で連載が続いているものも多かったように思います。
一方、近年の『鬼滅の刃』や『進撃の巨人』など、たとえ人気の最中でも展開の必然性に沿って物語の幕を閉じる、いわゆる「連載引き延ばし」をしない作品が増えてきているように思います。『進撃の巨人』などは完結にあたり、同作を掲載していた「別冊少年マガジン」の編集部が、むしろ「いつ連載は終わるのか」と、諫山創先生をせっついていたとさえ聞きます。
昨今のこうした風潮はどんなところから生まれているのでしょうか。
まず考えられるのは、マンガ作品の「寿命」の変化です。この場合の「寿命」とは、連載期間の長短ではなく、作品が一般的に流通し、読者に読まれる期間と考えてください。
いまでは考えられないことかもしれませんが、1960年代、雑誌に掲載されたマンガのなかで単行本になるのはごく少数でした。元来子ども向けの商品と見なされていたマンガは、単行本を買ってまで再読するものではないと考えられていたのです。
それが青年向けの劇画やストーリーマンガの興隆を経て、70年代には単行本の発売はビジネス上のひとつの柱となりました。こうして独立した本になったことで、マンガ作品の寿命は雑誌で読み捨てられるものから大きく延びました。
そして老若男女問わずマンガを読むようになった現在、単行本以外にも愛蔵版や文庫版、新装版など、ひとつの作品がさまざまな形態で再販され、その寿命はさらに延びています。
もちろん、このように多様な形態で再販されるには、最初の連載から単行本になった段階で人気作であることが条件ですが、同時に再読に耐えうるひとつの作品としての完成度も重要な要素となります。
冒頭に挙げた「連載引き延ばし」の減少は、こうした作品の寿命の変化を受けてのものではないでしょうか。
多様な再販によって作品の寿命が延びた現在、目先の人気にとらわれて「連載引き延ばし」で木に竹を接いだような展開になるよりは、ひとつの作品としての完成度を高めたほうが、結果的に長く読まれる作品になる土壌は整っています。
「終わりよければ、すべてよし」という言葉がありますが、特に連載とリアルタイムでなく完結後に作品に接する読者にとって、物語がきれいに完結しているかどうかは、重要な評価基準のひとつでしょう。
また作品の寿命が延びたことから、昨今アニメや実写などで旧作マンガの映像化も急増していますが、これらも物語として上手くまとまっている作品のほうが、映像化の際に有利なのは言うまでもありません。



