マグミクス | manga * anime * game

もはや業界が無視できない”ゲーム実況動画サイト” インフルエンサーを起用した新たな販売手法も

ゲーム動画を"観る専門のユーザー"をターゲットにしたゲーム実況サイトは、ゲーム開発企業にとっても、今や大きな「広告」の役割を担っています。

 放課後に友人宅で、プレイするゲームを見て、一緒に盛り上がるのは誰しもが経験した思い出ではないでしょうか。

写真はイメージ(画像:Roman Samborskyi /123RF)
写真はイメージ(画像:Roman Samborskyi /123RF)

 現在のゲームプレイをしながら実況配信する「ゲーム実況動画」の盛況ぶりは、当サイトでも取り上げた通りです。チャンネルによっては年収5,000万円超えの配信者もいるほどで、プレイだけではなく“見る”ことに需要が高まり、ゲーム実況動画の市場は拡大しています。

 株式会社CyberZの運営する「OPENREC.tv(オープンレック)」や、Amazonが運営する「Twitch(ツイッチ)」などがゲーム実況に特化したサイトとして有名で、コアなゲームファンを中心に盛り上がりを見せています。

 また、昨年2018年9月には、大手エンターテインメント企業、21世紀フォックスが1億ドル(約109億円)の出資をした「Caffeine(カフェイン)」がオープン。大手企業が続々と市場に参入しています。

 このようなゲーム動画配信サイトの隆盛は、ゲーム業界にどのような変化が現れた結果なのでしょうか。ゲーム自体の”購入をせずとも楽しめてしまう”ことは一見、ゲーム業界にとって購買数が伸び悩む原因のようにも見えます。

 勢いのあるコンテンツを表彰するアプリの祭典「App Ape Award 2018」で行われたパネルディスカッションでは、一人あたりが遊ぶアプリ数が減少、新規ユーザーの獲得も困難になり、アクティブなユーザー数も伸び悩んでいると有識者が指摘。新作のゲームをリリースしても”遊ばれない”という状況下で、ゲーム開発企業は”見る専門のユーザー”をどう捉えているのでしょうか。

インフルエンサーが売上に影響、新たな販売手法

 その実、ゲーム業界はゲーム実況配信の盛り上がりを肯定的に受け止めているようです。現在日本で「Twitch(ツイッチ)」の広告営業ディレクターを務めるジョン・アンダーソン氏は、ゲームストリーミングチャンネルの広告主は「そのほとんどがゲーム業界に関する企業」であると語っています。

 視聴者を多数抱え、強い影響力を持つ動画配信者のことを、一般的に「インフルエンサー」と呼びます。自社の製品をインフルエンサーの動画内で紹介するといった販促手法も、最近では珍しいものではありません。「インフルエンサー」の影響力を積極的にゲームの販売に活用していこうという、企業の前向きな姿勢が見られます。

 マルチプレイ対戦ゲーム『ブロスタ』を手がけるゲーム会社Supercellの脇俊済氏は「インフルエンサーの方たちが、コンテンツを作っていくための支援が大切」と語っており、コミュニティマーケティングの重要性を説いています。コミュニティマーケティングとは、消費者同士の結びつきに着目し、企業はその結びつきの”場”を提供することで自社ブランドの価値を上げていこうという方策です。
 
 視点を変え、インフルエンサーの起用をプラットフォーム側から見てみましょう。ゲーム実況プラットフォーム「BUZZCAST」を運営する、株式会社BUZZCASTが発表した「GROWTH REPORT 2017」によれば、同サイトを通したアプリゲームのダウンロード数が約5万8740件(2016年)から約30万5370件(2017年)に増加。およそ520%もの成長を遂げており、インフルエンサーがゲームの市場において多大な影響力を持っているといえます。

 実況動画は、プレイするユーザーと観る専門のユーザーの双方から生まれた、ゲームの新しい楽しみ方です。消費者の側から自然発生したこの「ゲーム実況」というスタイルが、今後どのような動きを見せていくのか。注目したいところです。

(マグミクス編集部)