「あの料理が食べたい!」グルメ系作品に見る、マンガ・アニメの新しい楽しみ方
日本のアニメに登場する料理を実際に作ってみせる、海外の動画が600万を超える再生回数を記録しています。作中の料理を食べてみたいという願望が人気の一端を担っているのではないでしょうか。
"食事"は海外ファンの関心事のひとつ

日本のアニメが海外で放送されるようになり、登場したシーンに思いを馳せ、実際にその土地を訪れる「聖地巡礼」はそのまま「Seichi-junrei」と英語表記され、海外のファンにも認知されています。訪日へのきっかけを「アニメ」にする外国人旅行者も、年々増加しています。
一方で、海外のアニメファンが日本を舞台にしたアニメを視聴するなかで関心を持つのは、作品に登場する舞台や土地に限りません。キャラクターが口にする食べ物も、海外のアニメファンの心をつかむ要素のひとつとなっているようです。
アニメやゲームを扱うYouTubeチャンネル「REACT」では、「TRY NOT TO EAT CHALLENGE! – Anime Food」という動画が人気を集めています。
これは、アニメ作品に登場する”料理”に着目した動画です。各回チャレンジャーが登場し、アニメ作品の食事シーンを視聴した上で、シェフが実際に調理した同じ料理を目の前にして、食べることを我慢できなければ罰ゲームを受けるという、ゲーム性を盛り込んだ企画です。
題材にあがる日本アニメ作品は、公開当時、作中の料理の描かれ方が話題になった『千と千尋の神隠し』を手がけたスタジオジブリの作品や、2015年4月にアニメ第1期が放送された附田祐斗(つくだゆうと)先生のマンガ『食戟のソーマ』(講談社)などがあります。いずれの動画も600万回再生数を突破し、コメント欄にも「美味しそう」「実際に食べてみたい」といった多くの反応が見られます。

こうした試みに見られるように、単にマンガを読んで楽しむだけでなく、よりリアルに五感を使って楽しもうという機運がファンの間に生まれていると考えることができます。
人気ジャンルのひとつになった「グルメ系作品」

日本では『ミスター味っ子』(寺沢大介/講談社)、『美味しんぼ』(原作:雁屋哲/小学館)を金字塔とし、最近では『孤独のグルメ』(原作:久住昌之/扶桑社)がテレビ東京で松重豊主演でドラマになり、シリーズ化されました。「グルメ」は、日本マンガ・アニメの人気ジャンルとして確立したといえます。
「グルメ系作品」といえども、切り口も時代やテーマによってさまざまです。料理の腕を競う作品から、実際にある料理店を紹介する作品、はたまた「パン」や「ラーメン」といった特定の料理やジャンルに特化した作品など、料理の楽しみ方が豊富な日本だからこそ、取り上げ方も千差万別です。
また、近年の「グルメ系作品」には『ダンジョン飯』(九井諒子/KADOKAWA)や『空挺ドラゴンズ』(桑原太矩/講談社)といった、架空の食材を調理したり食べたりする料理マンガも注目を集めています。
こうした「グルメ系作品」のヒットの背景のひとつには、マンガが単なる娯楽から、新たな知識を提供する存在へと領域を広げたことが考えられます。作中のキャラクターの食事などを通して、日本を含めた世界各地の土地ごとの歴史や文化を紹介し、読者の知的好奇心を満たすような作品があいついで登場しています。
Webマンガサイト「くらげパンチ」で連載中の『山と食欲と私』(信濃川日出雄/新潮社)は、アウトドアをテーマにした作品で、山ならではのグルメを紹介しています。友人と夜な夜なお寄り寄せグルメに舌鼓を打つ『おとりよせミッドナイト』(ハナムラ/講談社)では、全国各地の知られざる逸品が登場します。
聖地巡礼と同様に、作品の世界を五感で体験したいという欲求は、以前からあるものですが、動画メディアでマンガ・アニメに登場する食べ物が取り上げられることで、作品の世界に没入できる機会はより増えているといえます。マンガ・アニメのなかの「グルメ」は、読者に幅広い食の知識を提供するとともに、マンガ・アニメの楽しみ方をよりリアルに、多様に進化させているといえるでしょう。
(マグミクス編集部)