『ドラゴン桜』と比べて分かる!『アルキメデスの大戦』で味わうべき面白さ
最新のVFXによって、不沈艦と呼ばれた戦艦「大和」を甦らせた映画『アルキメデスの大戦』が2019年7月26日から公開中です。さっそく評価の声や期待の声が多くあがっていますが、一方で「戦争映画と思って観に行ったら、違った」との声も少なくありません。同作品には、原作者・三田紀房のもうひとつの代表作『ドラゴン桜』との共通点があります。そこから、映画最大の楽しみどころと作品のメッセージ性が見えてくるのです。
無謀な戦艦建造に「数学脳」で立ち向かう

菅田将暉主演による実写映画『アルキメデスの大戦』の劇場公開が2019年7月26日(金)から始まりました。『SPACE BATTLE SHIP ヤマト』(2010年)や『永遠の0』(2013年)で知られる山崎貴監督が、今回は悲劇の戦艦「大和」をリアルに再現したことで話題ですが、さらに注目したいのは、本作の原作者が受験漫画『ドラゴン桜』の三田紀房氏である点です。
菅田将暉が演じる主人公は、東京帝国大学きっての天才児、櫂直(かい・ただし)。巨大戦艦の建造に血まなこになっている海軍首脳陣を相手に、数学の力で闘いを挑み、太平洋戦争の勃発を防ごうとします。
美しいものを見ると、つい計測したくなるという櫂は、かなりの変わり者です。ある事情から東大を退学するはめになりますが、そんな変わり者の民間人・櫂に、海軍少将の山本五十六(舘ひろし)は協力を求めるのです。
時は1933(昭和8)年。「これからは航空機の時代が来る」と山本五十六は予測し、海軍には多くの戦闘機を搭載できる空母が必要だと考えていました。しかし、海軍の上層部は日露戦争でロシア海軍に圧勝した成功体験が忘れられず、より巨大な戦艦の建造を計画していました。海軍内では航空主兵主義と大艦巨砲主義との主導権争いが起きていたのです。山本五十六は頭脳明晰な櫂を利用して、古くさい大艦巨砲派を退けようとします。
米国との緊張感が徐々に高まる海軍を舞台にした歴史ドラマですが、阿部寛主演作としてドラマ化もされた『ドラゴン桜』のように、非常に分かりやすく展開していきます。
『ドラゴン桜』は、三流高校の生徒たちが破天荒な弁護士・桜木の指導によって東大合格を目指すサクセスストーリーでした。桜木は不可能を可能に変える男です。『アルキメデスの大戦』の主人公・櫂も持ち前の数学脳をフル回転させることで、不可能を可能へと変えていくのです。