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『ドラゴン桜』と比べて分かる!『アルキメデスの大戦』で味わうべき面白さ

海軍を舞台に激突する、「合理主義」と「情念」

原作者、三田紀房氏によるマンガ『ドラゴン桜』第1巻(講談社)
原作者、三田紀房氏によるマンガ『ドラゴン桜』第1巻(講談社)

 桜木は「東大に合格したいなら、文系ではなく確率が高い理系を狙え」と生徒たちを指導します。徹底した合理主義者です。櫂もまた合理的に物事を考えます。造船に関する知識はゼロだった櫂ですが、海軍の旗艦を長らく務める戦艦「長門」の構造や寸法を知ることで、軍事機密扱いとなっている新しい巨大戦艦の予想図面を引いてみせるのです。東大生、おそるべしです。

 きれいに割り切れる数式の世界を愛する櫂は、大艦巨砲派が不当な見積りで新しい戦艦を建造しようとしていることが許せません。さらに言えば、国民から搾り取った血税を使って、戦場で無用の長物となる戦艦を造ることは、一部の財閥系大企業を潤すだけであり、とうてい認めるわけにはいきません。そもそも国力が違いすぎる米国を相手に、資源の乏しい日本が戦争を考えること自体がナンセンスなのです。

 櫂は世話係である田中少尉(柄本佑)や造船会社の社長・大里(笑福亭鶴瓶)らにサポートされ、桜木顔負けの独自メソッドで新戦艦の本当の建造費を算出することになります。しかし、曲がったことが大嫌いな合理主義者である櫂の前に立ち塞がるのは、大艦巨砲派の造船少将・平山(田中泯)でした。世界最大となる巨大戦艦の建造に異様なまでに入れ込む平山は、日本人の民族意識に訴える“情念”を武器にして、櫂と激突することになるのです。

 本作で注目したいのは、単に「戦争はいけない」と型通りに訴えるのではなく、戦争がもたらす高揚感や狂気、戦艦の美しさに、人間はどうしようもなく魅了されてしまう一面があると言及している点です。

『ドラゴン桜』の桜木は、「世の中のルールは頭のいいやつに都合のいいように作られている」と説きました。史実にフィクションを織り交ぜた『アルキメデスの大戦』でも、同じことが描かれます。

 戦争はよくない、非合理的だと分かっていながらも、日本はしたたかな米国の挑発に乗ってしまい、太平洋戦争という破滅の道へと突き進んだのです。原作マンガは現在も連載中ですが、映画版の櫂が最後にどのような決断を下すのか、ぜひスクリーンで確かめてみてください。

(長野辰次)

※映画『アルキメデスの大戦』は、2019年7月26日(金)より、全国東宝系にてロードショー。

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