『牙狼〈GARO〉』シリーズの雨宮慶太監督、「映像演出者は人気のゲーム知っておくべき」
どんなに忙しくてもゲームに触れる時間を作る

ーーマーケットの広いゲーム業界は、予算もある反面、厳しさもあるわけですね。
映像を演出する立場の人間として、今の若者たちの間でどんなゲームが人気なのかは知っておくべきだと思います。毎日最低でも1時間はゲームをやってないと、ゲームの面白さは分からないでしょう。
僕は忙しいときでも、毎日少しでもゲームに触れるようにしています。映画やテレビドラマもそうだけど、やっぱり人の心に響くものがないとダメなんです。ゲームの場合はそれが遊び方なのか、それとも物語の面白さなのか……そのことを意識しておくことは大事でしょうね。
ハリウッドも注目する雨宮作品
ーー映画監督と違って、キャラクターデザインだけを頼まれた場合は、他人の世界観に合わせなければならない難しさもあるのではないでしょうか?
キャラクターデザインだけを頼まれた場合は、逆に気楽でいいですよ(笑)。頼まれたキャラクターに対して数種類のパターンを用意するんですが、気楽な分だけ意外といいのが描けてしまうことも(笑)。
それが自分の作品の場合だと、自分の世界観が分かっているから、世界観にぴったり合うキャラクターになるまで、徹底的に直していかなくちゃいけない。『牙狼』の場合はあまり頻繁に新キャラクターを出さないし、物語上で必要に迫られない限りビジュアルを変えることもしないのです。
ーー雨宮監督の作品は、ハリウッドのクリエイターたちにもかなり影響を与えているようですね。ギレルモ・デルトロ監督の『パンズ・ラビリンス』(2006年)に登場する魔物ペイルマンが、雨宮監督の『仮面ライダーZO』(1993年)のコウモリ男にそっくりで驚きました。
『スポーン』(1997年)という映画にも、僕の会社でつくったデザインとそっくりなものが出ていたとファンが教えてくれました。でも、向こうはハリウッドという大メジャーでしょ。後出しジャンケンみたいなもので、勝負にはなりません。まぁ、偶然の産物かなと思うようにしています(笑)。
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インタビューでは「現場でいちいち熱くなっていては、映画監督は務まらない」とも語っていた雨宮監督。オリジナルシリーズ「牙狼」の集大成的作品となる『牙狼〈GARO〉 月虹ノ旅人』は10月4日(金)より劇場公開されます。円谷英二監督の作品から学んだという雨宮監督の特撮精神を、がっちりと受け止めたいところです。
(長野辰次)
●雨宮慶太(あまみや・けいた)
1959年千葉県生まれ。ビデオ映画『未来忍者 慶雲機忍外伝』(88年)を監督し、注目を集める。東映スーパー戦隊シリーズ『鳥人戦隊ジェットマン』(テレビ朝日系)の監督を務める一方、劇場映画『ゼイラム』(91年)と『ゼイラム2』(94年)が人気に。以降、『仮面ライダーZO』(93年)、『仮面ライダーJ』(94年)、『人造人間ハカイダー』(95年)などを監督。2005年から放映がスタートした『牙狼 GARO』(テレビ東京系)は人気シリーズとなり、劇場版やスピンオフ作品が数多く制作されている。『鬼武者2』『クロックタワー3』などのゲーム作品にもキャラクターデザインで参加している。