豪華すぎる! 大友克洋、今敏、片渕須直らの共作『MEMORIES』がBS12で放映
化学テロの恐怖を先取りしたブラックコメディ

Episode.2『最臭兵器』は、「マッドハウス」制作のパニックコメディです。『劇場版 NARUTO ナルト 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!』(2004年)などを手掛けることになる岡村天斎監督の初監督作で、アクション演出を得意とする川尻善昭監督が監修しています。
山梨県にある製薬会社の研究所に勤めていた研究員が、風邪薬と間違って極秘開発中の新薬を口にしたために前代未聞のドタバタ活劇が始まります。新薬を服用した研究員は全身から強烈な臭気を発し、その匂いを嗅いだものは次々と仮死状態となっていきます。研究員は知らないうちに、生体兵器となってしまったのです。
研究員が東京本社に向かったことから、被害はますます広まっていきます。自衛隊の戦車部隊に米軍のシーホークまで出動し、首都圏はパニック状態と化していくのでした。
自衛隊や米軍による砲撃シーンは、かなりの迫力です。日本映画には珍しいブラックコメディとして完成した『最臭兵器』でしたが、公開された1995年はオウム真理教による化学テロが起きたこともあって、観客は笑うに笑えない状況だったようです。
もちろん、オウム事件よりも先に企画は進んでいたのですが、劇場作品は公開のタイミングによって予想外の悲喜劇が起きがちです。ある意味、先見性に富んでいた作品だったとも言えそうです。
『この世界の片隅で』の片渕須直監督が見せた緻密な仕事ぶり

Episode.3『大砲の街』は、大友克洋氏自身の監督作です。キャラクターデザインには、のちにオムニバス映画第2弾『SHORT PEACE』(2013年)にも参加する小原秀一氏が起用されています。あたかもひとつのカメラで全編ノーカットで撮影したかのような、非常に凝ったカメラワークになっている点も注目ポイントです。
巨大な大砲を持つ要塞都市を舞台に、砲弾の装填手である父親、爆弾工場で働く母親、将来は砲撃手になることを夢見る息子の1日が淡々と描かれます。
主人公一家をはじめ、街で暮らしている人たちは、おそらく自分らが何を相手に戦っているのか、なぜ戦っているのかは分かっていません。生まれたときから、街に大きな大砲があるため、みんなせっせと砲撃の準備に努めています。欧州のアートアニメを思わせる、シニカルな作品です。
こちらも「スタジオ4℃」が制作しており、当時「スタジオ4℃」に所属していた片渕須直監督が技術設計で参加しています。『この世界の片隅に』で戦時中の広島市の街並みをリアルに再現してみせた片渕監督だけに、『砲撃の街』の細やかな世界観も目を見張るものがあります。
秀逸なカメラワークも、片渕監督なしでは成立しなかったと言われています。戦時下を生きる平凡な家族の物語という設定は、『この世界の片隅に』と共通しており、興味深いものがあります。
片渕監督はこの後、丸山正雄プロデューサーのいる「マッドハウス」を活動拠点に移し、『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年)で注目を集めることになります。
あまりにも『AKIRA』のインパクトが強すぎたために、劇場公開時は大きな話題にはならなかった『MEMORIES』ですが、のちに今敏監督や片渕須直監督らが大ブレイクしたことで、公開時とは違った印象を受けるのではないでしょうか。「記憶」とは生き物のように、時代によって変化していくものなのかもしれません。
(長野辰次)








