三角関係に苦悩するヒロイン! 初代『ゴジラ」は切ない「恋愛映画」だった?
1954年に公開された『ゴジラ』は、ゴジラ映画の第1作であり金字塔を打ち立てた作品です。幅広い層に受けた理由は怪獣映画でありながら、恋愛映画の要素があったことも理由のひとつではないでしょうか。
巨大怪獣の出現の影に戦争が生んだ悲恋が
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1954年に公開された「ゴジラ」シリーズの1作目『ゴジラ』は、日本の怪獣映画の元祖です。怪獣映画でありながら恋愛ドラマ的な要素もあったため、幅広い層に受け入れられました。人知を超えた大怪獣の出現に騒然となる日本列島と同時に、ふたりの男性の間に揺れるヒロインが描かれています。今回は、第1作目『ゴジラ』の恋愛映画としての側面に迫りましょう。
第1作でゴジラ退治の鍵となる水中酸素破壊剤「オキシジェン・デストロイヤー」は、水爆以上の破壊力を持っています。
開発した芹沢大助博士(平田昭彦さん)はゴジラの存在を国会で発表した山根恭平博士(志村喬さん)の愛弟子で、かつてはひとり娘の山根恵美子(河内桃子さん)と婚約していました。ところが、戦時中の大怪我によって片目を失明して、芹沢は一方的に婚約を破棄、研究に没頭してオキシジェン・デストロイヤーを開発します。
その後、恵美子は芹沢の旧友である尾形秀人(宝田明さん)と恋人になります。しかし、尾形は芹沢が恵美子に対する未練があるのを知ってか、ふたりの仲を公言できないままでした。
そんな折、芹沢は「ふたりだけの秘密」として、恵美子だけにオキシジェン・デストロイヤーの存在を打ち明けます。芹沢は悪用されるリスクのあるオキシジェン・デストロイヤーをこのまま封印するつもりでした。はからずも恵美子は、尾形に言えない秘密を抱えてしまいました。決して芹沢に浮気した訳ではないのに、擬似三角関係のような状態に恵美子は苦しみます。
しかしゴジラが上陸し、町が破壊された人びとが犠牲になる姿を見た恵美子は罪悪感に耐えきれず、芹沢を裏切り、尾形にオキシジェン・デストロイヤーの存在を明かすのです。当初、オキシジェン・デストロイヤーの使用を拒否していた芹沢ですが、恵美子と尾形の説得に折れ、使用を認めます。恵美子が秘密を暴露した時点で、恵美子の心はすでに自分にはないと覚悟していたのかもしれません。
芹沢は尾形に「幸福に暮らせよ」と言い残して、オキシジェン・デストロイヤーによって海中でゴジラとともに消滅します。開発者である自らを葬り去ることで、オキシジェン・デストロイヤーを完全に封印したのでした。
国内外を含めて30作以上制作されたゴジラ映画ですが、恋愛がドラマの根幹になったのはこの第1作だけでした。見方によっては、ゴジラの存在よりも哀しい三角関係の結末の方が印象に残った人もいるでしょう。恋愛ドラマに比重が置かれるとゴジラの存在が霞んでしまうため、娯楽映画としてシリーズ化されるにあたって、恋愛要素は少なくなってしまったのかもしれません。
さらに、第1作でゴジラを唯一完全に倒せるオキシジェン・デストロイヤーを芹沢博士が封印したために、その後に次々と後続のゴジラや他の大怪獣が出現して、大暴れすることになってしまいます。
その後、1995年公開の『ゴジラVSデストロイア』では、芹沢博士が使ったオキシジェン・デストロイヤーの影響で古生代の微小生物が復活してデストロイアになり、平成ゴジラと対決します。そして、山根恵美子(同じく河内桃子さん)が41年ぶりに再登場しました。劇中では詳しくは語られていませんが、山根の姓のままだったため、結局、尾形とは結ばれず独身を通したようです。
(LUIS FIELD)