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登場回数ほぼ1回と少ないのに ゴジラの敵で「ヘドラ」だけ「別格?」な理由とは

ゴジラ作品の怪獣のなかで、「ヘドラ」は登場回数の割に、別格の人気を誇ります。その魅力を改めて、掘り下げていきましょう。

ヘドラはゴジラと同格か

「ムービーモンスターシリーズ ヘドラ(1971)」(BANDAI) TM & (C) TOHO CO., LTD.
「ムービーモンスターシリーズ ヘドラ(1971)」(BANDAI) TM & (C) TOHO CO., LTD.

 70年以上の歴史を誇る「ゴジラ」シリーズには、実に多くのスター怪獣たちが登場しています。

「ラドン」「モスラ」「キングギドラ」「アンギラス」「ガイガン」……昭和、平成、そして令和の現在に至るまで、子供は怪獣たちに胸を躍らせてきました。さて、錚々(そうそう)たるゴジラ怪獣たちのなかで、ひときわ異彩を放っているのが「ヘドラ」です。

 1971年公開の『ゴジラ対ヘドラ』において、鮮烈なデビューを飾った「ヘドラ」はその後、いわゆる「人気怪獣」とは少し格の違う、異次元の支持を集めてきたように思えます。その別格な立ち位置を体現しているのが、映画シリーズでの登場回数です。

 実のところ「ヘドラ」は、その知名度の割に『ゴジラ対ヘドラ』以降のシリーズ作品に登場することは、ほぼありませんでした。『ゴジラ対ヘドラ』の次に登場するのが、2004年公開の『ゴジラ FINAL WARS』です。

 しかも、この作品はシリーズ最終作(当時)と銘打たれて公開された、いわばゴジラ怪獣が集結する「お祭り」のような作品でした。当然そこにはラドン、ガイガン、アンギラスも同席しています。

 これを踏まえると実質、ヘドラが登場する劇場映画作品は、『ゴジラ対ヘドラ』のみといえるでしょう。もちろん登場回数が一度のみの怪獣はほかにもいますが、改めてヘドラの別格さが分かる要素について検証していきます。

 まずヘドラの異質な部分として、彼が公害という社会問題から発生した点があげられるでしょう。高度経済成長に伴って深刻化した水質汚染が怪獣となって、具現化した存在なのです。

 つまり、水爆実験の申し子として生まれた初代「ゴジラ」と同じく、発生要因が「物語の外」にあり、当時の人々の社会問題意識と接続した怪獣だったといえます。『ゴジラ対ヘドラ』は、人類が生み出した「最悪と最悪」がぶつかり合う構図でした。

 その設定の特殊さだけでなく、『ゴジラ対ヘドラ』は娯楽映画としてあまりにも、斬新だったと言えるでしょう。坂野義光さんは、黒澤明さんの助監督出身で、本作が監督デビュー作です。とりわけ「サイケデリック」な演出が随所に施されているのは、本作の大きな特徴といえます。

 冒頭から「水銀 コバルト カドミウム」というワードが並んだ衝撃的なオープニング主題歌を麻里圭子さんが踊りながら歌い、背景には海に滞留する浮遊物と魚の死骸が、露悪的に映し出されました。また場面展開の際には、似つかわしくないポップなアニメーションが挿入されます。

 一方で、中盤以降の荒野におけるゴジラとヘドラの一騎打ちは、一気に色彩が失われて、退廃的な雰囲気が頂点に達するのです。

 そして、やはりヘドラの衝撃的なビジュアルは、さまざまな怪獣のなかでも群を抜いています。井上泰幸さんがデザインされた異形の怪獣は、これまでのゴジラ怪獣とはまるで異なっていました。生物としてのリアリティーとは真逆の、この世ならざる存在が持つ禍々しさを抽出したかのような姿です。

 ただれた身体に、縦に裂けたふたつの眼球は、グロテスクでありつつも、なぜか美しさを感じさせます。この特異なビジュアルに魅せられた人も多く、ヘドラのソフビはいまも人気です。

『ゴジラvsヘドラ』は、当時の公害への問題提起や、メジャーな大作怪獣映画とは思えない演出含め、1960年後半から流行ったいわゆる「カウンターカルチャー(主流既存の支配的な文化や体制に対抗する文化)」の精神が反映された作品といえます。

 そう考えると、有名な「ゴジラが放射熱線を逆方向に吐いて飛行する」という賛否分かれる描写も、怪獣映画の「主流に反する」目的があったのかもしれません。

 異彩を放つ本作は、多くの映像クリエイターたちを刺激してきました。ゴジラ関連でいえば、『ゴジラ-1.0』を監督した山崎貴さんは、リメイクしたい作品として『ゴジラ対ヘドラ』を挙げています。

 何より『ゴジラ対ヘドラ』監督の坂野義光さんもまた、『新ヘドラ(仮称)』のシナリオに取り掛かっている最中だったのです。残念ながら坂野さんは、2017年に亡くなりました。いつか、令和の最新技術で、よりリアルになったヘドラを見ることはできるのでしょうか。

(片野)

【画像】え…っ? 「なんかキレイになっちゃった」「禍々しさが」 コチラが2004年のゴジラ映画に出た「2代目ヘドラ」です

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