「打ち切り主人公死亡END」からの大逆転! 「ジャンプ」人気作品の大ヒット前夜
多くの人が知る人気のマンガ作品でも、はじめから人気が出たものもあれば、なかなか伸びず早期に打ち切り危機の噂があった作品もあります。そんな過去を持つ大ヒットマンガ作品の、打ち切り危機からヒットまでの経緯を見てみましょう。
今の大ヒットぶりからは信じられない過去

国民的人気作や社会的なブームにまで発展した「週刊少年ジャンプ」(集英社)のマンガ作品にも、打ち切りを噂されたことや作者自身が打ち切りを覚悟していたという話が聞かれます。
たとえばそれは、2023年12月現在も大人気連載中の、芥見下々先生によるマンガ『呪術廻戦』です。コミックスのシリーズ累計発行部数は8000万部を突破し、TVアニメ第2期が放送されています。
芥見先生は、お笑い芸人のケンドーコバヤシさんがMCを務めるTV番組『漫道コバヤシ』(フジテレビONE)第74回(初回2021年1月30日放送)、第75回(初回2021年2月27日放送)に出演、そのインタビューにて、当時すでに人気作となっていた『呪術廻戦』の打ち切り危機について語ったことが話題になりました。連載早々の第4話にして危機が迫っていたそうで、打ち切りになった場合、主人公の呪術高専1年生、虎杖(いたどり)悠仁は第6話から始まる「呪胎戴天」編で復活せず死亡する結末だったそうです。
転機となったのは、第5話ラストの予告でした。とある少年院の上空に呪霊が現れた描写のあと、黒い背景に「高専の1年生3名が派遣され、内1名死亡」と書かれ、強いインパクトを残したのです。読者なら誰しもメインキャラ3名が派遣されるであろうことは容易に想像がつき、1名の死亡者が誰なのか注目されます。
第6話から突入した「呪胎戴天」編では、最終的には虎杖に宿る両面宿儺(りょうめんすくな)が彼の身体を乗っ取り、自らの心臓をえぐり出し、序盤にして主人公が命を落とすという刺激的な展開で予告が回収されました。
その後は、虎杖の復活や、虎杖の担任教師である五条悟のデタラメ級の強さが明らかになるなど、テンポよく物語が展開したうえに、呪術高専の2年生たちの個性豊かなキャラが物語を盛り上げます。迫力ある戦闘シーンだけでなく、キャラ同士のコミカルなかけ合いも面白く、この一連の緩急が読者の心を掴んだのかもしれません。
『呪術廻戦』はさらにアニメ化で爆発的な人気を獲得し、迫力のあるアクションシーンや人気声優の起用などで注目を浴び、原作ファンからも「作画良すぎて原作勢でも楽しめるアニメ」と高く評価されました。打ち切りの危機から一転、現在では「週刊少年ジャンプ」の看板作品と目されるまでになったのです。いまや、打ち切りの危機にあったとは想像すらできません。
●起死回生の「路線変更」と「企画」
そうした、打ち切りの危機にあったとはにわかに想像しがたい作品といえば、1979年に連載開始した、ゆでたまご先生によるマンガ『キン肉マン』も挙げられるでしょう。現在では国民的人気を誇る本作は、ギャグマンガとしてスタートし、熱血格闘ストーリーマンガへと路線変更していきました。
連載当初は人気が奮わず、打ち切りの危機にあったといわれます。やがて格闘マンガへとシフトし人気を獲得していくなか、これを勢いづける企画が誕生しました。作品に登場する超人キャラのデザインを一般の読者から募るというものです。
「超人募集」と題したこの企画は、読者の創造力に火をつけ、そこから「ロビンマスク」や「バッファローマン」「アシュラマン」「キン肉マン スーパー・フェニックス」など、作品に欠かせない多くの人気キャラが誕生しました。
読者参加型のキャラ制作は、当時はとても新鮮で大きな反響があったといいます。路線変更と超人募集の両輪で、『キン肉マン』は打ち切り寸前のマンガから人気作へ駆けあがった、といえるでしょう。
SNS上では、「超人募集で採用されることはオリンピック出るより、大金持ちになるより名誉なこと」「読者に支えられ愛された作品」と、超人募集はいまだに話題で、応募も受付中です。『キン肉マン』は「週刊プレイボーイ」と「週プレNEWS」で、2023年12月現在も毎週月曜日に更新されています。