「いや~」な描写でファントラウマ… 前作までと方向性違い過ぎた『MOTHER3』
シリーズファン衝撃のワケ

続いては、具体的に『MOTHER3』の内容をチェックしましょう。本作のどこがトラウマなのかといえば、第一章の時点でいきなりアクセルを踏んでくるところです。
第一章の名前は「とむらいの夜」。もはやこれだけで何かが起こることは明白で、その嫌な予感は見事に的中してしまいます。また、映画でよくある「いいニュースと悪いニュースがある」という言い回しが出てくるのですが、悪いニュースはあまりにも悪過ぎて多くのプレイヤーに衝撃を与えました。
『MOTHER3』は「タツマイリ村」という小さな村を中心に物語が描かれています。そして、物語が進む度にこの村はどんどん変化していくのです。
最初は村人たちが協力しながら暮らしを営んでいましたが、あることをきっかけに村は大きく成長していきます。いわば近代化の道を歩んでいくものの、その様子はかなりいびつになっているのです。
この「急激に近代化するにつれて大きな何かを失う描写」はかなりグロテスクに見えます。もちろん血が出たりするわけではないのですが、それまで主人公たちを温かく見守ってくれた人たちの態度がガラッと変わったり、利益に目がくらんで大事なものを売り飛ばしてしまう姿は、人間のおぞましさを感じさせます。
また、仲間のひとりはかなり悲惨な状況にあります。「サルサ」という仲間キャラクターがいるのですが、彼はあやしい行商人に捕まって奴隷のように働かされているのです。人質ならぬサル質をとられているため逆らうこともできず、サルサはことあるごとに電撃で痛めつけられます。
サルサの旅路はあまりにも悲惨であり、無力さを突きつけられるかのような展開が続きます。ドット絵で描かれているためまだマシですが、本当につらい物語なのです。
そして、敵のバックボーンも大きな問題です。たとえば「悪いことばかりしている倒すべき魔王」であればそいつを倒す気にもなりますが、『MOTHER3』の敵キャラクターは誰も彼も悲しい過去を背負っています。
複雑な事情があるからこそ悪の側に立っているのであり、それゆえに主人公たちと対立せざるを得ない。これは設定として見るとしっかり作り込まれていていいのですが、そういう人たちを倒してもスッキリしないどころか、より落ち込むだけになってしまうのです。
いくつか具体例を挙げましたが、『MOTHER3』はこれ以外にもヤバい要素がてんこ盛り。仮面の男、きゅうきょくキマイラ、トラウマだらけのタネヒネリ島、世界の秘密、諸悪の根源、そしてエンディングなど、どれを見ても心がささくれ立ちます。
前作までと方向性が違い過ぎて驚きを生んだ『MOTHER3』ですが、プレイヤーに衝撃を与えることは間違いありません。ぜひ、その目でトラウマっぷりを確かめてみて下さい。
『MOTHER3』
(C) 2006 SHIGESATO ITOI / Nintendo
Sound:(C) 2006 HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
(すすだま)