任天堂の「新しい提案」は否定されがち? それでも「逆風跳ねのける」慧眼と底力
スイッチの特徴的な機能を「不要」と断じた声も

●スイッチの「携帯性」が、新しいライフスタイルと合致
発売前のスイッチに向けられた否定的な視線は、このほかにもいくつかありました。そのひとつは、スイッチの特徴である「携帯性」への疑問視でした。
任天堂の携帯ゲーム機といえば、ゲームボーイからニンテンドー3DSまで、幅広く支持されてきました。ですが、その活躍を脅かしたと言われているのが、スマホの台頭です。
スマホは携帯ゲーム機よりも持ち運びやすく、タッチパネルで操作も簡単、基本無料で遊べるゲームも多く、メールに通話など多彩な機能も備えています。その利便性の高さから普及が一気に進み、「移動中に使うのはスマホ」「携帯ゲーム機はその座を追われた」「スイッチの携帯性は不必要。需要に合っていない」と考える人が少なからずいました。
確かに携帯ゲーム機自体は、3DSも含めて直系の後継機はなく、他社も含めて途絶えている状態にあります。この状況を踏まえれば、携帯性があってもスマホには勝てず、無駄な機能にしかならないと考えるのも、無理のない話かもしれません。
ですがスイッチの携帯性は、ユーザーの需要に見事ハマりました。それは、スマホの普及によって変化した新たなライフスタイルに合致したためです。スマホが持つ利便性のひとつは、場所を選ばずアクセスできること。出先はもちろんリビングから自室まで、「いつでも・どこでも」使える便利さに慣れたユーザーは、そのライフスタイルを好み、馴染んでいきました。
TVにつなぐ従来の据え置き型ゲーム機は、新たなライフスタイルと相反しており、遊ぶにはTVがある場所に自分が行かなければなりません。またスマホの普及で、家や自室にTVそのものがないケースも増えました。いずれにせよ、ゲーム機にとっては逆境の展開です。
しかしスイッチは、「いつでも・どこでも」が可能なゲーム機でした。一台で完結しているのでTVも必須ではなく、スマホと同じようにベッドで寝転がりながら楽しめます。
スイッチの携帯性はスマホと争うものではなく、スマホによって変化したライフスタイルのなかでも生きていける、時代にマッチした機能という成果を遂げました。いまとなっては誰も、「スイッチに携帯性は不要」とは言えないでしょう。
もちろんこのほかにも、子供同士が持ち寄って遊ぶコミュニケーションツールとしての役割を果たすなど、携帯性の恩恵は多々存在します。こうした社会のニーズを見抜いていたとすれば、任天堂の先見性に脱帽するばかりです。
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今回は、発売前にささやかれた否定的な意見のなかでも、特に大きなふたつの点に絞り、その逆風を跳ねのけた理由の一端に迫りました。
このほかにも、スイッチが逆風に打ち勝った要素はいくつもあります。例えば、「低価格路線で性能を下げたのは間違い」という意見もありましたが、この価格帯だからこそ普及が進み、「一家で一台」ではなく「ひとり一台」が視野に入るほどの広がりにつながりました。
どれほど性能が優れていても、また魅力的な点が多くても、新しいゲーム機が普及するかどうかはフタを開けてみるまで分かりません。状況がひとつ変われば、全く違う結果になる可能性もあります。
ですが、スイッチがさまざまな不安を乗り越えて打ち勝ったのは、紛れもない事実です。スイッチと同じような成功を、任天堂は今後も続けていけるのか。まずは2024年の展開に注目しましょう。
(臥待)





