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『THE FIRST SLAM DUNK』はなぜ「一見さん」でも楽しめる人が多い? 随所の工夫、奥深さ

2022年12月に公開され、2024年6月10日からNetflixで独占配信中が始まったアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、「一見さんは楽しめない」「原作を読んだことがないけど楽しめた」という声が拮抗しています。ここでは、筆者個人の「一見さんでも楽しめる工夫」をネタバレありで記します。

「自己紹介」「単純な呼ばれ方」「それを覆す奥深さ」がある

映画『THE FIRST SLAM DUNK』ポスタービジュアル (C)I.T.PLANNING,INC. (C)2022 SLAM DUNK Film Partners
映画『THE FIRST SLAM DUNK』ポスタービジュアル (C)I.T.PLANNING,INC. (C)2022 SLAM DUNK Film Partners

 2024年6月10日より、『THE FIRST SLAM DUNK』がNetflixで独占配信されています。2022年12月3日に公開されてからロングランヒットを記録した本作で興味深いのは、熱心な原作ファンから「一見さんは楽しめない」という意見を聞く一方で、初めて作品に触れた「一見さん」からは「原作を読んだことがないけど楽しめた」「原作どころかバスケのルールも知らないけど感動した」といった声も多くあがっていたことです。

 もちろん作品の受け取り方は一人ひとり異なるため、ひとくくりに断言できることはできません。しかし、筆者個人が改めて作品を見たところ、「これは『スラムダンク』を知らない人にも楽しめる工夫がたくさんある」「いや、むしろ『スラムダンク』をまったく知らずに見られる人がうらやましい」とさえ思えたのです。

 その5つの理由を記しましょう。

※以下の記事では『THE FIRST SLAM DUNK』の結末を含むネタバレに触れています。

1:普遍的な「喪失」の物語である

 映画の冒頭から、今回の主人公である「宮城リョータ」が、幼い頃に父を亡くしていたことが分かります。さらに試合中に回想形式で語られるのは、兄の「ソータ」もまた海の事故で亡くなったこと、そしてリョータが「兄のようにはなれない」とコンプレックスを抱え、しかも兄と同じようにバスケを続けることが母親を苦しませているのかもしれないという葛藤、それでもなおスポーツを「生きる支え」とする感情でした。

 リョータに限らず、愛する大切な人、家族を急に亡くしてしまうというのは、誰の人生にも起こりうる不幸です。そして亡くなってすべてが終わりというわけではなく、その「喪失」が残された人たちに影響を与え続け、その喪失を乗り越えるための道を探すというのも、また普遍的なことでしょう。それらの心理描写が繊細かつ丁寧で、リョータという主人公に共感できることが、原作を知らない人にもおすすめできる大きな理由です。

2:映画を見る観客に近い「親のような気持ち」も描かれる

 さらに、主人公のチーム「湘北高等学校」を応援する面々の「自己紹介」的なセリフもあります。「(相手チームの山王工業高校の)部員何人いるんだ」「名門感ハンパねえ」「それに比べて、オレたちの寄せ集め感…」と、「絶対王者」の応援の熱気と比較しての自虐的な物言いがあった上で、赤木晴子は自分を指差して「妹」と、高宮は「友達」などと言ったりするのです。

 この映画を見ている「観客」である私たちもまた、彼らと同じ「応援をする立場」です。いかに勝利することが困難であるか、「相手チームとの圧倒的な格差」をこのセリフで分かりやすく示したことも重要でしょう。

 さらに、その晴子の「ああ…なんか親になった気持ち」という言葉に一同が「わかる」と同調する、さらには彩子から「何言ってんの!応援しなさいよ!」と怒られる様からも、それぞれの気持ちがストレートに伝わります。そうした「初めは応援に熱が入っていない」様も、『スラムダンク』という作品を知らない人にとっても「入り込みやすい」と思うのです。

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