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『ドラクエ』グラフィックはファミコン版のほうが良かった? 「りゅうおう戦」には秀逸演出も

1986年に発売されたファミコン版『ドラクエ』のグラフィックは、いまも高く評価されており、現行機向けのリメイク版より上だと考えている人も少なくないのです。そこまで人を惹きつけるファミコン版『ドラクエ』の魅力とは。

ファミコン版『ドラクエ』が描く、優れた演出と質の高いグラフィック

ファミコン版『ドラクエ』の戦闘シーンは、臨場感と演出が一体化していた。 (C)1986 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
ファミコン版『ドラクエ』の戦闘シーンは、臨場感と演出が一体化していた。 (C)1986 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

 ゲームのグラフィックは、開発機器の向上、ゲーム機の発展、TVやモニタの高性能化などの恩恵を受け、時代とともに著しい進化を遂げました。往年の作品をベースにリメイクしたゲームは、その傾向が特に分かりやすく、原作とリメイク版では見た目の違いが一目瞭然です。

 そのため、過去の名作を楽しんだプレイヤーのなかには、新たなビジュアルで生まれ変わるリメイク版に期待を寄せ、心待ちにしている人も少なくありません。例えば、スクウェア・エニックスが生み出した表現技術「HD-2D」で生まれ変わるリメイク版『ドラゴンクエストIII』には、多くの人たちが関心を寄せ、新たな続報を心待ちにしています。

 ただし、技術的な進化が、必ずしも高く評価されるとは限りません。先ほど名前を挙げた「ドラクエ」シリーズの原点である1作目の『ドラゴンクエスト』は、スーパーファミコンやゲームボーイ向けにリメイクされた後、携帯電話やスマートフォン、そしてNintendo SwitchやPlayStation 4などで遊べる新たなリメイク版(以下、現行機版)も作られました。

 しかし、ファミコン版『ドラクエ』と現行機版『ドラクエ』を比較した時、万人全てが後者に軍配を上げるとは限りません。機器的な技術力は劣っているのに、ファミコン版の「グラフィック」を高く評価する人も少なくありません。

 なぜ、「ファミコン版のグラフィックのほうがよかった」と一部ファンが声を挙げるのでしょうか。ノスタルジーや思い出補正などの理由も影響している可能性は否定できません。しかし、心情的な面だけでなく、ファミコン版『ドラクエ』のグラフィック表現が実に優れているのも、間違いなく事実です。

●『ドラクエ』のグラフィックセンスは、時代を先取りしていた

 ファミコン版『ドラクエ』が発売されたのは、 1986年5月27日のこと。ファミコンの発売からまだ3年も経っておらず、RPGというジャンルすら、まだ日本に広く定着していない頃でした。

 当時のコンピュータRPGは大半がPC向けで、『ウィザードリィ』や『ザ・ブラックオニキス』などが有名です。しかし、そのグラフィックはといえば、いたってシンプルなで、華やかさなどはあまり感じられないものでした。

 そんな時代に登場した『ドラクエ』は、粗いドット絵ながらもキャラクターや建物などを的確にデフォルメ化し、最低限の形状で登場人物やアレフガルドの世界を描きました。

 特に目を引くのは、戦闘シーンの背景です。戦う相手を別ウィンドウで表示するゲーム自体はありましたが、ファミコン版『ドラクエ』では、背景までしっかりと描き、その場にいるモンスターと対峙しているような臨場感を見事に醸し出します(※フィールド戦闘時)。

 簡素な描画表現も多いなか、鳥山明氏がデザインしたモンスターとマッチした素晴らしい戦闘背景は、いまも記憶に残っている人が多いでしょう。当時味わった衝撃を抜きにしても、時代を先取りした演出には脱帽するほかありません。

 リメイクされた現行機版『ドラクエ』にも、戦闘シーンには背景が描かれています。しかしここで重要なのは、「単なる背景の有無」という話ではなく、ファミコン版『ドラクエ』は、当時当たり前ではなかった演出を盛り込み、見事に表現したという点です。一方現行機版『ドラクエ』は、戦闘に背景があるのは当然の時代です。グラフィックの革新性という点において、ファミコン版『ドラクエ』に高い評価を下す人がいるのも、ごく自然な話でしょう。

【画像】えっ、デカくなり過ぎィィ! 「りゅうおう」の変身ビフォーアフターを見る(3枚)

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