『マジンガーZ』やっぱり納得いかない! 大敗北からの退場劇(最終回)から半世紀
TV版と劇場版では扱いが違ったマジンガーZ
前述したように、ミケーネの戦闘獣によってマジンガーZが敗れ、その危機にグレートマジンガーが駆けつける、というストーリーの流れは、TV版と劇場版とで大きな違いはありません。しかし細かな点を見ていくと、いくつか相違点もありました。
それは、TV版では2体の戦闘獣「グラトニオス」と「ビラニアス」の前に、マジンガーZは完膚なきまでに倒されていますが、劇場版では13体の戦闘獣を相手に何体か撃破している点です。つまり強大な戦闘獣相手にマジンガーZは一矢報いているのでした。
グレートマジンガーもマジンガーZが撃破される前に駆けつけ、ダブルマジンガーの共演という見せ場を作っています。そして劇場版のラスボスにあたる「獣魔将軍」を「ブレストファイヤー」と「ブレストバーン」の合体攻撃で撃破しました。
つまり、劇場版ではマジンガーZは完敗でなく、辛勝ともいえる形になっています。新主人公機であるグレートマジンガーの独壇場ではなく、マジンガーZにもかろうじて見せ場が用意されていました。これによりTV版最終回よりも劇場版を支持するファンが一定層います。
筆者も子供時代から近い意見を持っていました。それゆえにTV版最終回には、モヤっとしたものを今でも感じます。それは、主人公が敗北する最終回でいいのだろうか……という疑問にも通じました。
もちろん最終回に敗北したヒーローといえば、誰もが思い出すだろう『ウルトラマン』があります。他にも最終回で命を落として敵を倒すというヒーローも何人かいました。しかし、それらのヒーローと比べて問題視される点は、旧主人公が新主人公のかませ犬のような扱いになるところです。この点に関してはいまだに納得できません。
もしも『マジンガーZ』の最終回が「Dr.ヘル」との決戦で大団円となり、次回作『グレートマジンガー』第1話で新たな敵によってマジンガーZが敗れるという展開になれば、見方も変わったことでしょう。この展開に近いのが『仮面ライダーV3』第2話での、ダブルライダーの退場劇だと思います。
もっともTV版には、マジンガーZのリベンジマッチが描かれていました。『グレートマジンガー』終盤でのマジンガーZの再登場です。ここでのマジンガーZの戦いぶりは目を見張るものがあり、戦闘獣はもちろんのこと「七大将軍」まで倒す姿は『マジンガーZ』最終回でのうっ憤を存分に晴らすものでした。
続編ゆえの敗北を喫したマジンガーZでしたが、それゆえにリベンジを果たすところも描かれたというわけです。最高のカタルシスといえるでしょう。作品を観続けた子供たちにとってご褒美のようなものです。
もっとも、その活躍が観られたのは1年も先の話でした。あの時の悶々とした日々は、同じくリアルタイムで作品を観ていた人にしかわからないかもしれません。今思えば貴重な体験のひとつでしょうか。
(加々美利治)