「∀ガンダム」のコックピットは子宮!? 実はそこにも込められていた作品テーマとは
あれは男根であり子宮!

「∀ガンダム」は「これまでのガンダムの全否定と全肯定をする」という大きなテーマで立ち上げられた、「リング・オブ・ガンダム」という企画から始まりました。「∀(ターンエー)」という見慣れない記号は、記号論理学において「全て」を表す論理記号です。つまり「∀ガンダム」とは企画テーマどおり「全てのガンダム」と名付けられたガンダムなのです。その「∀ガンダム」がこれまでのMS(モビルスーツ)「ガンダム」と似ていないというのは不思議なことです。
しかし抽象的なテーマを「象徴」によって表現するシンボリズム(象徴主義)の視点から「∀ガンダム」を見直すと、極めて考え抜かれたデザインであることが分かります。コクピットの位置とその形状は明らかに男根をモチーフにしていますが、実はパイロットを包む子宮でもあります。これは富野監督がシド・ミード氏にコクピットの場所を子宮の位置にするよう依頼していたことから明らかです。
また「∀ガンダム」のフォルムは曲線的で女性的ですが、立派な「ヒゲ」のようなフェイスガードは男性的です。牛を運んだり洗濯をしたりする平和的な面があるかと思えば、胸部のサイロに核兵器を封印し、文明を破壊する光の蝶の羽を隠しています。「∀ガンダム」という巨人には、戦争と平和、そして男性的なシンボルと女性的なシンボルが両立しているのです。
加えてパイロットの少年「ロラン・セアック」が、外交の場で美少女パイロット「ローラ・ローラ」として紹介されるほど中性的なキャラクターである点にも注目です。白い機体と黒い肌という点でも対照的な関係が見られます。
このように『∀ガンダム』には「ガンダム」を使って全てを包括するという極めて強いメッセージ性が感じられ、それが兵器としてのMS「ガンダム」とは異なるデザインにつながっているようです。アメリカ人デザイナーを起用したのは、あえて「お約束」を外したデザインにするためだったのでしょう。
●ほかにもある! 子宮の位置にコクピット配置したメカ
富野監督がコクピットを子宮の位置に配したのは「∀ガンダム」だけではありません。実は富野監督は『∀ガンダム』の前作『ブレンパワード』でも、機体(「アンチボディ」)の子宮の位置にコクピットを配置しています。またTVアニメ『聖戦士ダンバイン』と世界観を共有した『リーンの翼』のメカ「AB(オーラバトラー)」も子宮コクピットです。「ダンバイン」のABは胸部コクピットだったので大きな変更だといえます。
シンボリックな解釈を別にすれば、子宮コクピットにはコクピットの場所を頭部や胸部に配置するよりも重心が低く安定しやすい、という設計上の理由が考えられます。子宮コクピットは富野監督自身が生み出した「ガンダム」によって一般化したデザインに対する挑戦、という一面があったのかもしれません。
(レトロ@長谷部 耕平)

