「∀ガンダム」のコックピットは子宮!? 実はそこにも込められていた作品テーマとは
長い歴史を誇る「ガンダム」シリーズには様々な「ガンダム」が登場します。そのもっとも個性的な「ガンダム」といえば間違いなく「∀ガンダム」でしょう。「∀ガンダム」だけ他の「ガンダム」と似ていない理由について考えてみました。
これってホントに「ガンダム」なんですか?
「ガンダム」シリーズでも際立って異色のデザインで知られる『∀ガンダム』(ターンエーガンダム)の主役機「∀ガンダム」は、特徴的な「ヒゲ」に加えて、コクピットの位置も従来の「ガンダム」とは違い、胸部ではなく股間に位置します。なぜ「∀ガンダム」だけこのようなデザインなのでしょうか?
●「ガンダムらしさ」のアイコンを捨てたことで批判殺到
2024年時点では再評価されている「∀ガンダム」のデザインですが、TV放送当時は多くの批判が集まりました。特に槍玉に挙げられたのは、「ガンダム」の共通シンボルともいえる兜の「前立(まえたて)」のようなV字型のアンテナが口の位置に移動している点と、まるで上向きの男根のような筒型コクピットが股間に位置している点です。
それまでの「ガンダム」は、パイロットはMS(モビルスーツ)の胸部に搭乗し、V字のアンテナも額にありました(「サイコガンダム」など巨大MSは例外として)。この2点は「ガンダム」らしさの最低限にして究極のアイコンであり、世界各地のガンダムがバトルロイヤルを繰り広げる『機動武闘伝Gガンダム』でも踏襲されています。
セーラー服をモチーフにしている「ノーベルガンダム」や、背後にコブラの頭部を背負っている「コブラガンダム」、半魚人のようなデザインの「マーメイドガンダム」ですら、額のV字アンテナと胸部コクピットは共通です。このフォーマットさえ守れば「マンダラガンダム」のように下半身がお寺の鐘になっていてもガンダムと認識できるのですから、とてもすごいことです。
そのアイコンを完全に放棄してしまったため、「∀ガンダム」は大きな批判にさらされました。工業デザイナーであるシド・ミード氏による「ガンダム」らしさから逸脱したデザインは、当時のファンに受け入れられなかったのです。これはガンプラの売上が振るわなかったことから明らかです。
そして『∀ガンダム』以降、同様のデザインの「ガンダム」は制作されていません。極めて例外的な特殊デザインだったといえるでしょう。