「スイッチ2」大成功か失敗かの分岐点? 任天堂に待ち受ける“2つの難題”
任天堂による新ハード「スイッチ2」に高い注目が集まっています。しかし、まだ詳細が判明しておらず、スタートダッシュに向けて万全の態勢と断じるのは時期尚早です。少なくとふたつの不安要素が残っています。
いま求められる水準に「スイッチ2」は追いつけるのか

発売開始からもうすぐ8年を迎え、1億4604万台(2024年9月末時点で)もの販売実績を積み上げてきた「Nintendo Switch」(以下、スイッチ)の後継機となる「Nintendo Switch 2」(以下、スイッチ2)が、正式に発表されました。
携帯性の継承に後方互換性の搭載、「マリオ」や「ゼルダの伝説」、「どうぶつの森」シリーズといった人気IPの新作が登場する可能性など、スイッチ2は多くの好材料がそろっています。
しかし、順風満帆とはまだいいがたいのも事実です。これから明らかになるであろう情報次第では、スイッチ2の勢いが削がれる展開も十分に考えられます。
●ユーザーが求める「性能」の期待を超えられるのか
スイッチは名実ともに人気の高いゲーム機ですが、ユーザーから見て全く不満がなかったわけではありません。解像度やfps、ロード時間、内蔵ストレージなど、スイッチ自身が持つ「性能」に対する不満の声は、年を重ねるごとに目立っていきました。
高画質でハイスペックな性能を求める、AAAクラスのゲームを誰もが求めるわけではないものの、チラつきカクつき、エラー落ちなどがストレスの要因になるのも事実です。また、長いロード時間もプレイ意欲を大きく削ぎます。
昨今では、『モンスターハンターワイルズ』のように、PlayStation 5の性能でも十全とはいえないタイトルもあります。物理的に比較してもかなり小さいスイッチ2が、PS5並みの性能になるとは考えにくいものです。仮に限界ぎりぎりまで高めたとしても、目が肥えた現在のユーザーが求める水準に届くのかどうか、悩ましいところです。
●円安と物価高が進むなか、ユーザーが求める「価格」を打ち出せるのか
スイッチが成功した背景には、魅力的なゲーム作品や場所を選ばず遊べる携帯性に加え、本体自体の価格が抑えられており、購入に踏み切りやすかった点も大きな要因です。
スイッチの価格は、発売当初からいまも変わらず3万2978円(税込み)です。有機ELモデルでも3万7980円、携帯専用のLiteだと2万1978円なので、求める性能や出せる金額に応じて選択肢が複数ある点も嬉しい点でした。
しかし、ここ数年で円安や物価高が進み、その影響は電子機器にも及んでいます。その一例として、2020年に発売されたPS5は段階的に値上げが行われ、上位モデルのPS5 Proはゲーム機では異例の約12万円という高額になりました。スイッチ2がスイッチのように3万円台で登場するのは、世情的に見てもかなり難しく、予想の多くがスイッチの価格を上回ると見ています。
状況を踏まえれば、価格が上がるのも無理のない話です。しかし、子供にゲーム機を買い与える親御さんからすれば、価格の上昇は無視できず、最悪プレゼントの選択肢から外れる可能性も十分あります。若年層のユーザーを獲得する機会の減は、スイッチ2に大きな痛手を与えるかもしれません。
●携帯性の確定で、「性能」と「価格」への不安が増す現実
抜本的な解決とまではいえませんが、スイッチ2が一定レベルの「性能」を得た上で、「価格」をある程度抑える道が実はありました。それは、携帯性の放棄です。高い性能を持ったまま、持ち運びやすく小型化するのは、技術もお金に相当かかります。近年のスマホ端末の価格上昇を見れば、その実態を納得していただけるかと思います。
携帯性を手放して据え置き専用にすれば、本体のサイズを大きくできるため、性能と価格をある程度両立しやすくなります。さすがに、「ゲーミングPC並みの性能で低価格」といった無茶な希望は叶えられませんが、「小さくて高性能」より「大きくて高性能」の方が超えるハードルは自ずと下がります。
しかし先日正式発表されたスイッチ2は、スイッチのデザインや構成を忠実に受け継いでおり、携帯モードでプレイする様子も映像内にありました。スイッチ2の携帯性は、ほぼ確定と見ていいでしょう。
つまり任天堂は、「小さくて持ちやすい」という制限のなかで、ユーザーが期待する「性能」を備え、物価高に苦しむ消費者が出してもいいと思える「価格」を提供する……という難題に挑む形になります。
果たして任天堂は、この難題にどのような答えを出すのか。そして、提示された答えは、ユーザーを満足させてくれるのか。大成功にも、そして失墜にもつながりかねない、スイッチ2の動向は、ゲーム業界の新たな転換点となるかもしれません。
(臥待)