ゲームの実写化映画、歴代の成功ランキングを作るとしたら? 規格外の興行収入をあげているのは
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』はゲームの「アニメ映画化」として大成功を収めました。ここでは、「実写」のゲーム原作の映画から、成功した3作品を紹介しましょう。
「ゲームの世界が実写になった」こと自体に感動がある

2023年公開の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界公開興行収入は累計1900億円を突破、日本でも140億円を超える興行収入を記録しました。同作はアニメ映画史上でも歴代4位となっています。
ゲーム原作のアニメ映画では、間違いなく『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が一番の成功作ですが、「実写映画」の場合ランキングをつけるならどうなるのでしょうか。「実写と3DCGの融合」がされた作品もあり、そもそも実写とアニメと大きく分ける必要はないのかもしれませんが、やはり「生身の役者がゲームの世界で活躍する」「ゲームの世界が実写になっている」面白みも大きいと思うのです。興行収入と、批評的観点から振り返ります。
3位『バイオハザード』シリーズ(6作品)
2002年に1作目が公開された映画「バイオハザード」シリーズの6作品は、いずれも批評家および観客からは賛否両論を呼んだものの、6作品累計の世界興行収入は1200億円以上、日本でも累計200億円を突破するという、大成功のゲーム原作映画となりました。
大きな特徴は、主人公の「アリス」が映画オリジナルキャラクターであることがあげられます。シリーズを通じて彼女の成長の物語として観ることができますし、特に1作目では彼女が「記憶喪失」の状態から始まるため、原作ゲームを知らなくても彼女の気持ちとシンクロして物語を追うことができました。
1作目はサバイバルホラーとしての舞台立ては『エイリアン2』、とある印象的なトラップは『CUBE』に似ており、そういった点も含めて娯楽映画のツボを抑えた作りになっています。
さらに、各作品でクリーチャーとのバトルがスタイリッシュに仕上がっていたこと、主演のミラ・ジョヴォヴィッチさんにとっての代表作になるほどに「アクション映画としての独自の魅力」を積み上げていったことも大きいのではないでしょうか。とはいえ、シリーズを追うごとに「大味」な展開が増えていったのは事実ですし、原作の人気キャラクターの活躍がおざなりになっていた部分もあるとは思います。それでも、本作はゲーム原作のホラーアクションとして、確かな実績を積み上げたといえるでしょう。
また、2021年には映画シリーズを仕切り直したリブート作『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が公開されましたが、こちらは興行収入および評価ともに微妙な結果となりました。個人的にはゲームの1作目と2作目をミックスした「原作準拠」の作劇、もっといえば「要素を全部パッチワーク的に繋いで闇鍋にぶち込んだ」印象も含めて好きなのですが、ツッコミどころの多さを思えば不評にも納得できてしまいます。
2位『名探偵ピカチュウ』
『名探偵ピカチュウ』も、全世界興行収入が620億円以上、日本でも興行収入が30億円を突破している大成功作です。映画の魅力の筆頭としてあげられるのは、「人間とポケモンたちが都市で一緒に暮らしている世界」が構築されていることで、ポケモンたちの「毛並み」含め3DCGが作り込まれており、序盤の駅前でたくさんのポケモンが「いる」ことそのものに感動があります。
原作となるニンテンドー3DSのゲーム『名探偵ピカチュウ』の時点で、これまでの作品では言葉を話せなかった「ピカチュウ」と「お互いに言葉でコミュニケーションができる」ことが大きな魅力でした。「エイパム」たちが不可解な行動をするという物語の発端、行方不明の父親および謎の物質の正体を追う流れなどのメインの物語の流れは映画でも踏襲されていますし、「ピカチュウがコーヒー好き」といった細かい設定も共通しています。
さらに、そのピカチュウが「おっさん声で話す」というギャップ萌えの魅力も、とても大きいものでした。ゲームでは『鋼の錬金術師』の「ロイ・マスタング」役などで知られる声優の大川透さん、映画では俳優の西島秀俊さん(原語ではライアン・レイノルズさん)の声でしゃべるピカチュウもとても愛らしく、そのピカチュウが途中でひどく落ち込んだときの「しわしわ顔」も大好評でした。
また、映画ではバリヤードを「マイルドな拷問にかける」というブラックなギャグを入れ込んだり、中盤に天地がひっくり返るような大作娯楽映画としてのスペクタクルを作り出したり、さらには「父と子」のホロリと泣かせるドラマまで用意されていたのも美点です。原作へのリスペクトや映画独自の魅力という点において、ゲームの映画化作品のなかではトップクラスの成功作でしょう。
●1位『マインクラフト/ザ・ムービー』
日本では4月25日(金)から公開された『マインクラフト』は、全米では2025年最大のオープニング記録を樹立しており、初全世界興行収入8.16億ドル(約1166億円)を記録する大成功を収めました。日本でも4月25日(金)から4月27日(日)までの3日間で興行収入約5.9億円、動員約43.5万人を記録しています。ここまでの成績を残した以上、新作ながらこちらがNO.1成功作と言わざるを得ません。
原作となる『マインクラフト』がそもそも「世界で最も売れたインディーズゲーム」としてギネス世界記録に認定され、2023年には世界売上本数が3億本を突破し、さらには子供たちの主体性や探求心をはぐくむ「教材」としても注目されるコンテンツで、もはや原題の「文化」ともいえる存在です。
今回の映画はその原作ゲームにあった「創造力」を強く打ち出しており、「初めは武器やアイテムの使い方を間違えていたけど、その特徴を知れば有効活用できる」「建物を素早く建て屋上に登って、危機から逃れようとする」といった流れが楽しく見られます。ゲームで特徴的な「ゾンビ」「ピグリン」「スケルトン」といったモンスターが、やはり「リアル」寄りの造形で再現されているのも面白いところです。
さらに「ダメダメな大人と子供たちがとんでもない世界に迷い込んじゃった!」という、いわゆる「異世界転送(転移)もの」かつ「ダメ人間たちの成長物語」であり、ゲームを知らなくても感情移入しやすくなっています。ジャレッド・ヘス監督は2004年公開の『ナポレオン・ダイナマイト』という、さえない高校生たちの悲哀とおかしみがたっぷりの青春コメディー映画を手がけており、その作家性やダメなキャラクターの魅力が、本作にも存分に活かされているのです。
ただ、同作の批評家からの評価は賛否両論です。映画は全体的に「クレイジー」なギャグやシチュエーションが多めの内容になっており、それに伴い「勢いで持っていく」展開も見受けられるので、そこは好みが分かれるかもしれません。しかし、「アッパー系の娯楽作」や「はちゃめちゃさ」が好きな人にはハマるでしょう。
そして、これからのゲームの実写映画化作品における最注目は、2027年3月公開予定の『ゼルダの伝説』です。こちらは2024年の『猿の惑星/キングダム』が高評価を得た、ウェス・ボール監督がメガホンを取ることが明らかになりました。『猿の惑星/キングダム』は広大なフィールドを駆け回るアドベンチャーであることなど、「『ゼルダ』と相性抜群の作家性」が見えるので、今から楽しみにしています。
(ヒナタカ)