「有害」と断裁処分され… 『いけない!ルナ先生』規制運動に反対した作者の「心の叫び」
コミックスが大ヒットした伝説のマンガ、『いけない!ルナ先生』はコミックスが発売禁止の憂き目に遭っています。なぜそのようなことが起こったのでしょうか?
大ヒットしたコミックが発売中止になった理由

『いけない!ルナ先生』(以下『ルナ先生』)は、上村純子先生が1986年から1988年にかけて「月刊少年マガジン」(講談社)で連載されたお色気マンガです。
幼い頃に母親を亡くし、父親が海外出張で不在の中学生「わたる」と同居することになった女子大生で家庭教師の「ルナ」先生が、過激な個人授業をするというお話で、毎回披露されるルナ先生の刺激的な姿が大きな反響を巻き起こしました。
わたるの心配をする優しいルナ先生が、「フロに入らない→フケツでクサイ→イジメられる→自殺」「分数のたし算もできない→勉強ができない→ぐれる→落第→人生の落伍者→犯罪者→死刑」などと過剰に考えて、「わたるが死んじゃう~~」と泣きながら、わたるが興味を持ってくれるように刺激的な個人授業を始める展開もほほ笑ましく、「こんな先生がいたらいいのに」と思った中学生男子も少なくなかったでしょう。
連載は1年半続き、単行本はいずれも40万部を超える大ヒットとなりました。しかし、88年から89年にかけて起こった東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件を契機とする「有害コミック」の規制運動によってコミックスの5巻は発売中止、既刊もすべて絶版になってしまいました。なお、連載が終了したのは上村先生の体調が悪化したためであり、規制運動とは関係ありません。
連載中も刺激的なシーンについては編集者からたびたび指摘を受けて描き直しており、上村先生も少年誌に掲載するので、読者をドキッとさせるシーンにもギャグを入れるなど気を使っていましたが、「有害コミック」として厳しい批判の対象となりました。版元の講談社は、青年誌に掲載されていた作品に関しては成年コミックマークをつけて出荷することで対応しましたが、少年誌に掲載されていた『ルナ先生』はそのような対応ができず、すべて断裁処分されてしまったそうです。
上村先生は93年に刊行された「有害コミック」規制運動についての書籍『誌外戦 コミック規制をめぐるバトルロイヤル』(創出版)に描き下ろしのマンガ「いけない?ルナ先生」を寄稿しています。その内容を紹介しましょう。
わたるの亡くなった母親が心配して天国からやってきますが、わたるの部屋にえっちなマンガがあることに激怒し、すべて捨てようとします。ルナ先生はわたるが自殺してしまうのではないかと心配し、母親に向かってこのように言います。
「わたるは物語と現実の区別くらい ちゃんとできてます!! それなのに18才みまんだからって エッチな本は読んじゃイケナイなんて 体は成熟してるのにかわいそうすぎるわっ!!」
「性犯罪をおこす子とおこさない子の違いって エッチなマンガを読んだか読まないかなんて そんな単純なことではないと思うわ! 性的興味はだれもがもっているんだから!!」
「現実にやって良い事と悪い事の区別がつくかつかないかは その子の親の教育や価値観の方が多分に影響があると思います それをただ取り上げてすまそうなんて」
言い返せなくなった母親は、手なづけてあった「権力」を使ってルナ先生を緊縛してしまい、「私から見て有害なものは全部この世から没収よっ!!」と高笑いして、えっちなマンガだけでなく、ルナ先生も連れ去ってしまいます。
ルナ先生がいなくなったことに気付いたわたるは、「バッカヤロー 俺はそんなにバカで単純な人間じゃないぞーっ!」と叫び、最後に「法規制絶対反対!!」と大きく書かれて終わります。上村先生の心の叫びがストレートに表現されたマンガでした。
『ルナ先生』は後に松文館より成年指定された復刻版として発売され、現在は講談社より電子版が出版されています。2023年からはリメイク版『いけない!ルナ先生R』(作画:ぼーかん)が「コミックDAYS」で配信がスタートしました。
(大山くまお)
