『トランスフォーマー』日本発売から40年 ロボットに持ち込まれた「推し文化」の衝撃
トランスフォーマー人気を現在に置き換えると「見えてくる」もの

『トランスフォーマー』の魅力、それは個性豊かなロボットたちの共演です。それまでの日本のロボットアニメでは、巨大ロボに人間が乗り込むというのが基本的なパターンでした。あくまでもロボットは武器であり、それを操縦する人間のドラマというのが定番だったわけです。
しかし『トランスフォーマー』ではロボット自体に性格があり、個性豊かな行動を取るという、日本人には珍しい作品でした。この部分が視聴者には新鮮なものとして受け入れられたのでしょう。
そう考えると、トランスフォーマーたちは単なるロボでなく、キャラクターであるわけです。そして従来のロボットアニメのオモチャが主人公ロボに注力したのとは真逆に、豊富なラインナップをそろえた形にしていました。
この豊富なラインナップも大きなポイントで、従来なら販売されないような敵側のメンバーもそろっています。本作では正義の「サイバトロン」と悪の「デストロン」という対立構造がありました。この両陣営がほぼ同じ規模で商品化されたのは、オモチャ史上でも珍しいことです。
ヒットしたものとしては『機動戦士ガンダム』のガンプラや、『ゾイド』くらいでしょうか。もっとも、どちらも組み立てが必要なものであり、単純に買ってすぐ遊べるという点では、『トランスフォーマー』とは大きく違います。
この正義も悪もラインナップするという商法は、タカラが以前から力を入れていた部分です。『変身サイボーグ』や『ミクロマン』などといった自社オリジナル商品がそうです。もっとも、それでも正義側に重点が置かれるという点が少し違いました。
そしてヒットした大きな要因として、すぐにオモチャ売り場を占拠できるほどのラインナップでスタートできた点でしょうか。これは『ダイアクロン』や『ミクロチェンジ』シリーズの流用という部分が良い方向に働いたわけです。
ちなみに、売り場に残った『ダイアクロン』や『ミクロチェンジ』も次第に姿を消しました。これは諸説ありますが、筆者の周りでは『トランスフォーマー』がないから代わりに買うというパターンと、色違いが何となくいいというパターンがあったかと思います。
特にデストロンのリーダー「破壊大帝メガトロン」は、日本では右腕の融合カノン砲がないバージョンで販売されたため、原典のミクロチェンジ版の「ガンロボ ワルサーP38 アンクル・セット」を探し求めたファンもいました。
この「好きなトランスフォーマーを購入する」という行為は、現在でいうところの「推し活」のようなものだと筆者は考えています。それまでのカッコいいロボが欲しいというよりも、個々のキャラクター性に惹かれるから……といった理由が大きくありました。
当時の筆者の周りでもそういう人間は多く、サイバトロンしか買わない、「パワーグライド」だけ何体も買う……といったこだわりを持って買っていた人がいます。そう考えていくと、何となく近年の推し活とむすびつきました。
そして、これらを支えたのが『トランスフォーマー』という作品に主人公がいないという点でしょうか。もちろんサイバトロンのリーダー「総司令官コンボイ」という存在はいます。しかし物語は基本的に群像劇であり、すべてのキャラにスポットが当たる機会がありました。
当時の玩具CMに「君が選ぶ君のヒーロー!」というフレーズがあります。この言葉通り、自分の好きなトランスフォーマーを推しとして選ぶことがファンの楽しみでした。
こういった、それまでの日本にない楽しみを与えてくれた作品が『トランスフォーマー』だったと思います。近年、さまざまな形で新作が作られていきますが、この「推し」という部分が重要であるためか、まったくの新規キャラよりも、コンボイやメガトロンの名前を引き継いだ商品が人気であるのではないでしょうか。
(加々美利治)








