『ばけばけ』新キャラ・クマは本来「3人」いた女中の仕事を1人でやってる? 「高い給金」とはどれくらいなのか
連続テレビ小説『ばけばけ』では第20週から熊本編が始まりました。96話から登場した女中・クマは高い給金を貰っているようです。
毎朝の食事だけで大変なはずだが

2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し、『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、「再話文学」の元ネタとなるさまざまな怪談を語った、妻・小泉セツがモデルの物語です。
本作は第20週から「熊本編」に入っています。第96話は主人公「松野トキ(演:高石あかり)」たちが松江を離れ熊本に移住してから3か月経った、1892年2月時点から始まりました。この回からは、トキや夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」たちの世話をする女中「クマ(演:夏目透羽)」が登場しています。
ヘブンのために毎朝パンも焼いているトワは、トキや養母「フミ(演:池脇千鶴)」が家事をしようとすると「高かお給金ば頂いとっとに、お手伝いばさしたら罰の当たりますけん」と、全力で止めていました。この場面を見た視聴者からは
「給金も高いらしいけどトキさんくらい貰ってるのかな。アメリカでは普通って言ってたものね。どう見ても当時のトキさんより仕事多そうだけど」
「おクマちゃん『高いお給金頂いて』って言ってたから松江のおトキちゃんくらい貰ってるのかな? なら頑張って働かねば!と思うよね」
「熊本の女中さんはパンまで自分で焼いたのかな。あんな大人数の女中の仕事を『高い給金貰ってるから』という義務で全部自分でやってる。おトキちゃんはヘブンさんひとりだけ、しかも食事は旅館で作ってもらってた」
「ここでトキ未満の給金だとやっぱりトキは金目当ての云々かんぬんと言われかねないので、クマには20円以上出さないわけにはいかないよね」
と、最初はヘブンの女中として月20円の給与を貰っていたトキと比較した意見が相次いでいます。
コメントにもあった通り、トキが女中だった時期は、ヘブンの食事は花田旅館が用意しており、世話する相手も彼ひとりでした。一方のクマは、トキとヘブン、フミと「司之介(演:岡部たかし)」のほか、同居しているヘブンの教え子「錦織丈(演:杉田雷麟)」、「正木清一(演:日高由起刀)」の食事も作り、その他の家事もひとりでやっています。仕事量を考えると、おそらくヘブンはクマに月20円以上の給料を払っているのではないでしょうか。
ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーンは、熊本時代に3人の女中を雇っていました。松江時代から世話を頼んでいたお米(ヨネ)、ハーンが行きつけにしていた松江の西洋料理屋から引き抜いた松のほか、熊本に来てから新たにお梅という女中を雇用しています。
彼女たちにいくら払っていたのかは不明ですが、こういった暮らしができたのはハーンの熊本第五高等中学校(現在の熊本大学)での月給が、松江中学時代の倍となる200円に跳ね上がったからでした。当時、第五高等中学校は全国に5つしかなかった官立(国立)の学校のひとつで、待遇も県立の中学より良くなったのでしょう。
『ばけばけ』劇中ではまだ語られていませんが、おそらくヘブンの給料も200円になっていると思われます。本来3人いた女中がクマひとりになっているので、ヘブンが彼女に40~60円程度の給金を払っていても不思議ではありません。
ちなみに、熊本時代のハーンは、何かと出費が多かったと思われます。ハーンが1891年11月から翌年11月まで住んだ武家屋敷(現存する小泉八雲熊本旧居)の家賃は11円で、松江の小泉八雲旧居(家賃3円)の4倍弱まで跳ね上がっており、それに加えて松江に残ったセツの生家・小泉家の家族たちへの仕送りもありました。
また、ハーンは松江から専属の車夫や西洋料理人を呼び寄せて、家に住まわせています。1893年11月には長男・一雄が生まれ、養う人数はどんどん増えていきました。
専属の料理人はいないようですが、ヘブンも熊本で家族や生徒たちを養い、車夫「永見(演:大西信満)」のことも引き続き雇っています。さらに、松江にいるトキの養祖父「勘右衛門(演:小日向文世)」夫妻、「雨清水家」の家族の生活費も払っているとなると、毎月の出費は相当な額になっていそうです。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『ラフカディオ・ハーン 西田千太郎 往復書簡』(八雲会)、『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)
(マグミクス編集部)