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『鬼滅の刃』冨岡義勇は“いい上司”? 名シーン・名セリフからにじむ有能さ

『鬼滅の刃』の水柱・冨岡義勇。無口で他人に関心がなさそうにも見えますが、実は部下思いの名指導者で、理想的な上司である一面も持っています。竈門炭治郎・禰豆子との出会いや那田蜘蛛山での戦いの名シーンから、その理由を読み解きます。

冨岡義勇のセリフから見る“いい上司”像

『鬼滅の刃』画像はDVD/Blu-ray2(アニプレックス) (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『鬼滅の刃』画像はDVD/Blu-ray2(アニプレックス) (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 冨岡義勇(とみおか・ぎゆう/CV:櫻井孝宏)は『鬼滅の刃」に登場するキャラクターで、鬼を滅ぼす組織「鬼殺隊」の最強メンバー「柱」のひとり。主人公・竈門炭治郎も使う「水の呼吸」の使い手で「水柱」と呼ばれます。

 炭治郎が最初に出会った鬼殺隊士でもあり、彼を入隊させるきっかけを作った人物。また、炭治郎の妹・禰豆子をかばい、竈門兄妹のためなら命を捨てる誓いを人知れず立てていました。

 義勇の劇中でのセリフを見ていくと、彼が実は上司としても稀有な素質を持っていることが分かります。一見、無口で人付き合いが苦手そうにも見えますが、実は情に厚く、きちんと他人を評価した上で正しい方向に導くことができる名指導者であることが見えるシーンを追っていきます。

●「人喰い鬼はそうやって増える」冨岡義勇の的確な説明

 義勇と炭治郎が初めて出会ったのは、禰豆子が鬼になり、兄に襲いかかった時でした。

 義勇は使命として、鬼である禰豆子を殺そうとします。もちろん炭治郎は妹をかばったのですが「なぜ かばう」という言葉が義勇から発せられます。「妹だから」という炭治郎の願いも聞き入れず、義勇は禰豆子を殺そうとしつつ、その理由について的確に説明します。

「俺の仕事は鬼を斬ることだ。勿論お前の妹の首も刎ねる」

 これ以上ないはっきりした説明です。半分以上パニック状態になっていただろう炭治郎にもきちんと伝わる分かりやすい言葉です。

 逆に炭治郎は「禰豆子は違う、どうして今そうなったかはわからないけど」と、自分でも理解していないことを説得しようとします。

 もちろん、いきなり家族を殺され、たったひとり残った妹の禰豆子まで失おうとしている炭治郎の立場としては当たり前の言動です。むしろ、炭治郎が当時13歳だったと考えればしっかりした態度でしょう。パニックを起こしながらも説明しようとする様子を見て、義勇は冷静に返します。

「簡単な話だ。傷口に鬼の血を浴びたから鬼になった」

 これも、要点を抑えた明確な説明です。さらに義勇は続けました。

「人喰い鬼はそうやって増える」

 ここで義勇は、「鬼」とは言っても「妹の禰豆子」とは言っていないのです。この場合、「妹の禰豆子は傷に血を浴びて鬼になった」という言い方でも伝わります。むしろそう言い切ったほうが、いっそ諦めがつくかもしれません。

 義勇の言い方は一見冷たいようですが、人が鬼になるケースの一般論を述べているだけです。つまり、「大事な妹でなくても誰でも鬼になった。鬼であれば首を斬る」というスタンスです。

 つまり、義勇は炭治郎の妹を殺したいわけではない、という考え方もできるのです。人喰い鬼だから首を斬る、それだけであって誰かの大事な家族を殺すわけではないとも言えます。

 誰しも大事な家族を目の前で殺されたくはないはずです。言葉遊びのようではありますが、あくまで「人」ではなく「鬼」として扱うことで、かえって「禰豆子=鬼」として考えていないと説明しているようです。

 その後も義勇は、「禰豆子を人に戻す。絶対に治す」と言い張る炭治郎に事実だけを言い聞かせます。

「治らない。鬼になったら人間に戻ることはない」

 これは、説明するとともに、ひょっとしたら炭治郎の現実対応力を見ているのかもしれません。これまでたくさんの鬼と戦ってきた義勇は鬼についてよく知っています。ですから、彼の言葉は冷たいようでも現実です。

 認めたくない現実にぶつかったとき、炭治郎という少年がどのような対応をするか。戦うのか、それとも逃げるのか。それを義勇は見ていたのではないでしょうか。ですから、簡単に首を落とせたはずの禰豆子に刀を突き付けるだけで、炭治郎の反応を見ています。

 そこで土下座して、許しを請う炭治郎に義勇の怒りがさく裂します。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」

 例えば、逃げるなり、立ち向かうするなりすれば、義勇はここまで怒らなかったかもしれません。怒った理由は次の言葉に集約されています。

「鬼共がお前の意志や願いを尊重してくれると思うなよ」

 これです。相手は自分の話を聞いてくれるとは限りません。ましてや人を食い殺すような相手では会話が成り立つはずがないでしょう。

「そんなこと(土下座して謝ること)が通用するならお前の家族は殺されてない」

 義勇はそうも言っています。続く言葉は、鬼という理不尽な存在とかかわる上での厳しさが表れています。

「奪うか奪われるかの時に主導権を握れない弱者が妹を治す? 仇を見つける?
笑止 千万!!
弱者には何の権利も選択肢もない 悉く力で強者にねじ伏せられるのみ!!」

 わずかな違いで生きるか死ぬかが分かれる、それが強者……鬼とかかわること、また弱者つまり人が鬼と戦う上での現実です。

 厳しい言葉ですが、また義勇の師匠であり、のちに炭治郎の育手となる鱗滝左近次も彼に対して「判断が遅い」と言っています。もしこのまま炭治郎が妹を治したい、つまり鬼とかかわり戦うというなら、その判断の速さ遅さは命を左右します。

 一見冷たいようですが、このとき義勇はきちんと炭治郎の「妹を治したい、そのためには鬼とかかわらなくてはならない」という願いのためにどうすべきかをきちんと示しているのです。

【画像】ぼっち感がたまらない!冨岡義勇のイラスト(6枚)

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