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『ガンダムF91』上映から30年…誰もが「続編」を期待、背景には製作の事情も

感動的なラストシーン、誰もがアニメによる続編を期待したが…

『機動戦士ガンダムF91』の続編にあたる内容がマンガで描かれた、『機動戦士クロスボーン・ガンダム』第1巻(KADOKAWA)
『機動戦士ガンダムF91』の続編にあたる内容がマンガで描かれた、『機動戦士クロスボーン・ガンダム』第1巻(KADOKAWA)

 この時代ならではの話をひとつ。当時、ネットなどはまだなかった時代ですが、うわさ話という形でファンの間で情報が飛び交うことがよくありました。当然、口伝するごとに情報が書き加えられる伝言ゲームのようなものです。

 そのなかで、本作に関する公開前の噂話でもっとも多かったのが、「今度のガンダムには口がある」というものでした。これは劇中最後の戦闘で主役機F91がフェイスオープンした時の形状を指していたものでしょう。このようにどこから漏れたか不明ですが、核心を突くような情報も時には聞こえてくるので、噂話もバカにできない。そんな風潮でした。

 しかし、それと同じくらい多かったもので「鉄仮面の正体は生きていたシャア」という誤情報もあります。作品を見れば一目瞭然。嘘だとわかりますが、ファンとしては以前のシリーズから一新されることを不安に思ったのかもしれません。

 併映作品が、当時大人気だったSDキャラが勢ぞろいした『武者・騎士・コマンド SDガンダム緊急出撃』だったこともあり好評でしたが、かつてのガンダム映画のような大ヒットには至りませんでした。

 さらに本作はストーリーこそ完結しているものの、戦いは収束していません。それは前述した通り、本作がテレビ版の1クールに当たる部分だからです。本来ならテレビ版、また劇場で続編となる『F92』という企画もあったようですが、実現されていません。しかし、当時は余韻のあったラストシーンから続く物語を、誰もが期待していました。

 そして2年後に、劇中の時間がさらに30年経過した新作テレビアニメ『機動戦士Vガンダム』が放送されます。この時に筆者は『F91』の物語について何か触れてくれるかもしれないと期待しましたが、そんなことがなかったというのは、皆さんもご存じのことでしょう。

『F91』の物語が動き出したのは、それから1年半ほど経過して連載された長谷川裕一先生のマンガ『機動戦士クロスボーン・ガンダム』でした。富野監督が原作を担当したこのマンガは、シーブックやセシリーが登場し、『F91』と地続きの続編というべきストーリーが展開しています。その直球ど真ん中のようなズバっと心に響く作品は、筆者も夢中で読んでいました。

 それはそれとして、筆者はあの『F91』の感動的なラストシーンから続く幻の『F92』をアニメという形で見てみたいと、今でもずっと思っています。ガンダムはやはりアニメで完結してほしいですよね。

(加々美利治)

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