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アニメだから描けた世界…北朝鮮収容所が舞台の『トゥルーノース』と、『映画大好きポンポさん』

3Dアニメ『トゥルーノース』は、北朝鮮の強制収容所の内情をリアルに描いた作品です。ポリゴンっぽさの残る3Dキャラクターですが、強烈な物語に引き込まれ、キャラクターたちにすっかり感情移入することになります。アニメ表現の新しい可能性に挑んだ『トゥルーノース』、そして同日公開された『映画大好きポンポさん』の魅力に迫ります。

悪夢のようだが、隣国に実在する世界

過酷な収容所生活を3DCGで描いた映画『トゥルーノース』
過酷な収容所生活を3DCGで描いた映画『トゥルーノース』

 3Dアニメと聞くと、ディズニー映画のようなロマンチックなファンタジー作品を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも、2021年6月4日より劇場公開が始まった日本とインドネシアとの合作映画『トゥルーノース』は、“ロマンチックなファンタジー”とは真逆な世界が3Dアニメーションで描かれ、大きな話題を呼んでいます。

 清水ハン栄治監督の監督デビュー作となる『トゥルーノース』の舞台は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に今もある「強制収容所」です。およそ12万人が収容され、強制労働などに従事しており、そのなかには日本人拉致被害者らも含まれていると言われています。

 北朝鮮側は「強制収容所」の存在を否定していますが、清水監督は収容所体験を持つ脱北者や元看守らを取材し、収容所の知られざる内情を克明に再現しています。拷問や処刑が平然と行なわれる、悪夢のような世界が描かれており、観客自身が収容所内の様子を目撃してしまったかのような衝撃を覚える作品となっています。

3Dアニメで描いたことのメリット

 物語の始まりは、1995年。9歳になる少年ヨハンは、翻訳家として働く父親ヨンジン、優しい母親ユリ、まだ幼い妹ミヒの4人で、北朝鮮の首都・ピョンヤンで幸せに暮らしていました。ところが、「在日朝鮮人帰国者」だったヨンジンは政治犯として、いきなり逮捕されてしまいます。日本と密通しているスパイだと断定されたのです。ヨハンたち家族も「連座制」によって、強制収容所送りとなってしまうのでした。

 収容所内では父親に再会できないまま、厳しい重労働が待っていました。しかも、1日に与えられる食べ物は300グラム程度のトウモロコシのみ。栄養失調で亡くなる人が続出します。脱走を試みた者は、容赦なく処刑されることに。絶望しか感じられない世界で、ヨハンは母親と妹を守ろうと懸命に立ち回ります。

「実写で描くとホラー映画になってしまう」という理由から、清水監督はアニメーション表現を使って、収容所の内情をディテールたっぷりに描いています。登場キャラクターたちには3Dアニメにありがちなポリゴンっぽさが残っていますが、むしろポリゴンっぽいことでリアルになりすぎず、観客のショックを和らげる効果をもたらしています。

【画像】アニメだからこそ描けた!見えない世界の内側…『トゥルーノース』と『映画大好きポンポさん』(16枚)

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