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「スポ根アニメ」ブームはなぜ起きたか?『アタックNo.1』のモデルだった魔女たち

汗を流せば、豊かになれると信じられた時代

1964年の東京五輪で大活躍した女子バレーボール日本代表チーム。ドキュメンタリー映画『東洋の魔女』(2021年12月11日公開)より
1964年の東京五輪で大活躍した女子バレーボール日本代表チーム。ドキュメンタリー映画『東洋の魔女』(2021年12月11日公開)より

 フランスで生まれ育ったファロ監督が撮ったドキュメンタリー映画『東洋の魔女』は、日本人が忘れかけていたことをいろいろと思い出させてくれます。選手たちは、普段は日紡貝塚工場で朝8時から他の工員たちと一緒に働き、午後から深夜過ぎまで練習に明け暮れたそうです。工場内にある社員寮が、彼女たちの家庭となっていました。

 また戦災によって家族を亡くした選手も多く、大松監督は父親代わりでもあり、同時に理想の恋人のような存在でもあったことが映画のなかで語られています。貝塚工場の選手たちによって構成された日本代表チームには、家族同然の強いつながりがあったのです。だからこそ、厳しいスパルタ特訓にも耐えることができたわけです。

 当時の日本は戦後復興を果たし、高度経済成長の時代を迎えていました。一生懸命に汗を流せば、それだけ豊かな社会になると信じられた時代だったのです。

「スポ根」に代わるキーワードは生まれるか?

 東洋の魔女たちが「回転レシーブ」や「木の葉落としサーブ」という独創的な技によって世界一に輝いたように、高度経済成長期は日本のメーカーが携帯ラジオやカラーテレビ、軽自動車など高性能の商品を次々と開発し、世界市場へと躍進した時代でもありました。

 そんな時代の熱気が日本代表チームの背中を押し、また彼女たちの活躍が『アタックNo.1』などの「スポ根アニメ」を生み、その影響を受けてさらに多くの若者たちが競技を始めるようになりました。「スポ根」は高度成長時代とシンクロしていたと言えそうです。

 現在のスポーツ界では、非科学的なスパルタ指導は否定されるようになりました。監督やコーチによる練習の無理強いは、パワハラ扱いされかねません。そんな時代の新しいヒーローとなっているのは、MLBでアメリカン・リーグ最優秀選手賞(MVP)に輝いた大谷翔平選手です。

 大谷選手は豪速球投手でありながら、目が覚めるようなホームランを放つスラッガーでもあるという「二刀流」ぶりでMLBの選手やファンたちを驚かせています。大谷選手の活躍は、マンガやアニメの世界観をはるかに凌駕してしまったのではないでしょうか。プロテインや筋トレが大好き。試合中もニコニコと笑っている大谷選手を観ていると、スポーツ界は新しい時代になったことを強く感じます。

 才能ある人材が従来の常識に縛られることなく、新しいことにどんどんチャレンジできる社会になれば、スポーツ界のみならず日本経済も活性化するのではないでしょうか。「スポ根」に代わる、新しいキーワードが生まれることを期待します。

 最後になりますが、『アタックNo.1』は鮎原こずえと早川みどりとの女子の友情もの、シスターフッドムービーとしても、とても面白かったように思います。

(長野辰次)

※『東洋の魔女』は、2021年12月11日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。
監督・脚本/ジュリアン・ファロ 撮影/山崎裕
配給/太秦
(C) Philippe Quaisse / UniFrance (C) 浦野千賀子・TMS

【画像】懐かし『アタックNo.1』につながる、五輪チームの活躍(9枚)

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