『スチームボーイ』BSで放映 大友克洋氏の「尋常でないこだわり」が詰まった描写とは
1988年に劇場アニメ化された『AKIRA』で知られる大友克洋氏は、マンガ界のみならずアニメの世界にも革命をもたらしました。日本のマンガとアニメはその先進性によって、世界中から注目されるようになったのです。長編監督第2作となった『スチームボーイ』も、大友作品ならではのこだわりが感じられる大作アニメです。
マンガ&アニメ界に革命をもたらした『AKIRA』

「大友克洋以前、以後」という言葉があります。マンガ家、そして映画監督としても知られる大友克洋氏の登場によって、日本のマンガ界、そしてアニメーション界は大きく変わりました。大友氏の長編監督デビュー作となった劇場アニメ『AKIRA』(1988年)は、日本だけでなく世界中のカルチャーに今も影響を与え続けています。
それまでは平面的だったマンガやアニメの世界を、大友氏は生身の骨格を持ったキャラクターたちや、構造を理解した上で描いた高層ビル群など奥行きのある背景によって、リアルに立体化してみせたのです。大友作品以降、音響面も大きく進化することになりました。
マンガ界とアニメ界に一大革命をもたらした大友氏ですが、ファン待望の長編監督第2作となったのが産業革命期の冒険談『スチームボーイ』(2004年)です。2022年2月20日(日)の夜7時から、BS12の「日曜アニメ劇場」でオンエアされる『スチームボーイ』の見どころを紹介します。
「サイバーパンク」から「スチームパンク」へ
大友氏の代名詞ともなった『AKIRA』は「サイバーパンク」と呼ばれる近未来のSF作品でしたが、15年ぶりの長編アニメ監督作『スチームボーイ』は「スチームパンク」と称される近代を舞台にした物語となっています。
19世紀中期の英国。蒸気機関車が走る鉄道が大きく発達し、科学技術が飛躍的に進歩していた時代でした。発明一家のスチム家に生まれた少年・レイ(CV:鈴木杏)は、祖父ロイド(CV:中村嘉葎雄)が送ってきた謎の金属球「スチームボール」を受け取ったことから、大事件に巻き込まれていきます。
この「スチームボール」には超高圧の水蒸気が閉じ込められており、想像を絶する力を有していました。米国の南北戦争で両軍に同じ武器を売って巨利を得た「オハラ財団」は、レイの父親エドワード(CV:津嘉山正種)がロイドと共同開発した「スチームボール」を狙っています。一輪自走車に乗って逃げるレイと、「オハラ財団」が放った歯車メカ(自走蒸気機関)とのカーチェイスが始まります。
物語中盤からは「オハラ財団」の令嬢であるスカーレット(CV:小西真奈美)、さらには巨大な「スチーム城」が登場します。「スチームボール」の力によって動く要塞となった「スチーム城」がロンドンに出現し、「第1回ロンドン万博」をパニックに陥れます。「スチーム城」の暴走を止めるため、レイは必死の抵抗を試みるのでした。